「マスターお願い。アタシをかくまって!」
突然訪ねてきたネビィオちゃんの懇願に、僕は目をぱちくりさせました。
知らない方のために説明すると、この子はモーモンの女の子でネビィオちゃんと言います。半年以上前にわが家を卒業し、今は猫島で猫たちの紛争を鎮めたり「ジュレットでゴミ拾いのボランティアをしている」という手紙を受け取っていました。だから今もどっかで楽しくやっていると思っていたんだけど?
「日替わり討伐も手伝うし、家事だってやるから。お願いお願い!」
「いや、急にこんな早朝に来られてそんな事言われたってさあ。とにかくちょっと落ち着いて」
僕は慌てふためきながらも、ネビィオちゃんをなだめました。だって、だって今、朝の6時半なんだもん!こんな風に騒いでいたら、近所迷惑です。
「すみません。そちらのモーモンは、ネビィオさんではありませんか?」
僕らが家の前で騒いでいると、上品な雰囲気のプクリポのお兄さんが門の前に立っていました。
「そうだけど。この子がどうかしたの?」
ネビィオちゃんはよっぽど顔を合わせたくないのか、寝たふりをしてそっぽを向いています。
「申し遅れました。私、この方の前のご主人の、知人の者です。その人が今、ネビィオさんを探していまして」
どうやらネビィオちゃんの知り合いと関係のある方のようです。
「ノフルさん、お茶を出してあげて。あと、朝食も3人分。カンタンな物でいいから」
「あら、あら。こんな時間にお客様ですか?」
立ち話もちょっとなと思ったので、上がってもらうことにしました。ノフルさんは驚きながらも、てきぱきとパンを焼いたりお茶を淹れる準備をしています。
「帰って、帰ってよ!今さら何の用事なのよ?」
「朝早くに申し訳ありません」
文字通りキーキーわめいているネビィオちゃんとは対照的に、お兄さんは申し訳なさそうに頭を下げました。
「確か僕は、ネビィオちゃんにとって3人目の主人でしたよね?1人目が人間の男性で、2人目がオーガのおじさんだったって。この子から聞いています」
「はい、そのようですね。私もそのように伺っています」
「人を使ってアタシのこと調べたのね、あいつ。悪趣味だわ!」
「ちょっとネビィオちゃん。話が進まないから静かにしててよ」
「だって……だって!とにかく帰ってよ~~!」
ずいぶん頑なな感じがするけど、なんでこんな態度を取るのかな?
これはちょっと本人、もとい本モーモンから話を聞いた方が良いのかな?と思い、僕は使いの人に断ってから、ネビィオちゃんを連れて再び外に出ました。
「前のご主人と何かあったの?」
仲間モンスターは、基本的には一度自ら決めた主人の元を離れることはありません。それなのに「出てきた」ということは、何か理由があるはずです。それとも逆に、追い出されてしまったのかな?
僕は真剣な気持ちで聞いたのですが、ネビィオちゃんときたら、
「う、うん」
と言ったきり、黙り込んでしまう始末。これじゃ何も分かりません。
ああ、信頼関係がないとこういう時にツライな。どうしたものだろう?女性同士だし、ノフルさんを呼んだ方がいいのかな?僕が相手だと言いにくいことなのかもしれないし。
思い悩みながらウンウン唸っていると、
「笑わない?」
ネビィオちゃんがふと、気をつけないと聞き取れないぐらいの小さな声で尋ねました。
「笑わないよ」
僕はネビィオちゃんの目を見て答えました。まあ、実際はまだ聞いていないから、「たぶん」としか言いようがないんだけど。
「【そんなことで】とか、【お前にだって原因がある】なんて言って責めたりしない?」
「……たぶん」
あ、なんか自信なくなってきた。
「【これこれこーだから、今からでもちゃんと帰るべき】って言わない?」
「言わないよ。僕は意見を押し付ける気もないし、どうするのかはキミが決めることだ。誰にだって意志があるんだから」
大丈夫かな?僕。ちゃんとこの子の話を受け止められるのかな?
少し不安になってきましたが、ここでちゃんと聞かないと何かマズイような気がしてきたので、自信があるふりをすることにしました。僕が不安そうにしていたら、たぶんネビィオちゃんはもっと不安になってしまうよね。
内心ドキドキしながらも精いっぱい落ち着いた顔をしていると、
「あのね……あの人、アタシの最初のマスターの知り合いの人なんだけどね」
と、ネビィオちゃんはおずおずと話し始めました。
ドラクエ10で知り合ったフレンドさんから聞いた話を元に、曲作りをしています。よろしければ、【YouTube 天宮燿子】で検索お願いします。作詞したのと歌っているのが自分です。
また、ご依頼も基本無償で随時お受けしています。