前回、前の主人の知り合いが訪ねてきて、強烈な拒否反応を示したネビィオちゃん。一体何があったのでしょうか?
「最初のマスターはね、30代ぐらいの人間の男だったの」
ようやく話す気になったのか、ネビィオちゃんはぽつりぽつりと語り始めました。
「いつも明るくって頼りがいがあって、周りのみんなからも好かれていた」
「日替わり討伐でパーティーを組む時も、いつもリーダーだったんだっけ?その人」
「そうね。それで家に帰ると『お疲れ』って言って、にこにこしながらご飯をくれた。デザートとか、何かご褒美があった日もあるわね」
聞いている限りだと悪い主人じゃないと思うんだけどなあ。何が不満だったんだろう?
「でも、ある日ふとしたことで体を壊しちゃってね。それから別人みたいになっちゃった」
「別人?」
「うん。毎晩のようにお酒を飲んでは『誰がこんな世の中にしたんだ!どうせ頑張ったって報われない』なんて言って暴れて物を壊したり、幸せそうな人を見ると、陰で『あんな連中、どっかでモンスターにでも襲われちまえばいいんだ』って言うようになっちゃって」
「あらら。大変だったんだね」
僕が相づちを打つと、
「そうよ、大変だったのよ!実際に手を出された事はないけど、いつ物が飛んでくるか分からなくて怖かったんだから」
「うん、確かにそれは怖い」
「今日使いで来たあの人や、日替わり討伐で一緒だった周りの仲間は『今ツライ時期なんだから支えてあげて』とアタシを説得したわ。自分が不自由になってもアタシを捨てずに養ってくれるんだから、まだ良い方だとも言われた。でも・・・途中でどうしても我慢できなくなって家を出たの」
僕が再びネビィオちゃを連れて部屋に戻ると、朝ごはんを食べ終わった使いのお兄さんが立って待っていました。
「ネビィオちゃんは、前のご主人に会いたくないようです。お引き取りいただけませんか?」
「そうですか。いや、残念だ。また伺いますね」
「もう来るな!!!」
キーキーわめくネビィオちゃんの態度にもめげず、お兄さんはにこやかな笑みを浮かべて去っていきました。
「ちょっとあの態度はないんじゃないの?イヤな相手だからといって怒鳴るなんて」
「だって・・・だって・・・・・・」
ネビィオちゃんは今にも泣き出しそう。
「前のご主人、今病気だって使いのお兄さんが言ってたよ。本当に会いに行かなくて良いの?」
僕の言葉に、ネビティオちゃんはシュンとした様子でうつ向いています。
「野生に戻ったら、かつて野で一緒に暮らしていたみんなに責められたの。マスターがおかしくなったのは、アタシにも原因があるって。ネビィオがもっとちゃんと見てたら、体を壊すこともなかったんじゃないの?って。自分が不自由になってモンスターを飼う理由がなくなったのに、養ってくれてたんだから良い人だ。屋根ある場所で寝る場所と食事をもらっているんだし、マイナスの言葉なんか聞き流せばいい。さんざ面倒見てもらったのに見捨てるなんて冷たいって」
「僕は別に、ネビィオちゃんが悪いとは思わないけどねえ・・・」
「とにかく会いたくないし、顔も見たくない!あいつと関係ある人って言われただけで、身の毛がよだつわ」
今回で完結予定だったのですが、文字数の都合で次回に続きます(^-^;