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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2015-02-13 22:28:48.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~魔女と英雄のインテルメッツォ【メルサンディ配信・ネタバレ有】

 大地を駆け抜ける風に、黄金の穂波がうねる。吟遊詩人が歌うサーガの序文を丸写ししたような光景が私の前に広がっていた。
 紫色の霧の元、美しい麦畑が風に揺れる。この大地をレンダーシアを呼び、新しい景色を求めて各地を巡ったのが、もう一年以上前の話である。
 輝く麦の穂を一つまみ、手にする。隣をゴールドオーク、ドラゴンキッズといった金色の魔物達が闊歩する。黄金の麦に、黄金の魔物。誰かが意図をもって揃えた「かのような」この景色を、当時は純粋に美しいと思えたのだが……。
 私は立ち上がり、村の方角に目を向けた。
 景色を眺めるためにわざわざやってきたわけではない。大魔王なき今、偽りのレンダーシアを再度探索し、その変化を報告せよ。それが魔法戦士として、ヴェリナードから与えられた私の任務である。

 まずは、アイリの新作がどの程度、この村に影響を及ぼしているか、だが……
 村に一歩入った途端、その影響力のすさまじさを思い知ることになった。
 熱に浮かされたような目つきで、ぶつぶつと呟く村人たち、村を覆う異様な空気。私は彼女の新作を読まずじまいでこちらに来てしまったが、どうやらかなりハードな展開になっているらしい。
 と、いうことは、つまり……。
 大魔王の魔力とは関係なしに、「あちら」と「こちら」は強力に結びつき合っている、ということになる。
 ううむ、と首をひねる。
 あくまでこのメルサンディは「あちら」側を元にして作っただけのもので、一度創造が終わってしまえば、後は枝分かれして、別々の道を歩むものだと思っていたのだが……
 これからも二つの世界は一蓮托生。あくまで偽りの世界は影に過ぎないのだろうか……?

「ううむ」

 と、いつの間にか私と同じく腕を組む影が、隣にあった。他の村人たちとは、少し違った面持ちである。

「やあ」

 ニヤリを笑みを浮かべ、彼は私を見上げた。
 そして彼は私に、多くの知識を与えてくれるのだが……
 それにしても、迂闊だった。
 もっと早くに気づいても良かったのだ。
 思えば、奇妙な青年だとは思っていた。事件が起きた時も歌い続けていた姿を覚えている。奇妙だとは思ったが、それ以上、追求することは無かった。
 勘のいい冒険者なら、どこかで察していたのだろう。全く持って、不覚の一言だ。

 まあ、それはともかくとして……
 吟遊詩人のパニーニ……と、呼んでおこう……は、ここで何が起きているのかを私に告げ、さらに打開策として小さなメモ帳を私に差し出した。

「どうか、これをアイリに渡してくれんかな」

 と。
 一瞬の沈黙。私はやんわりと押し返し、首を振った。氏は意外そうな顔つきだった。
 私だって、何も意地悪をしたいわけではないのだが……。果たして、本当にそれが彼女のためになるのか。自分の力で乗り越えてこそ、一人前の作家ではないのか?

「ふうむ、なるほどな」

 彼はうむうむ、と頷いた。その温和な笑顔に、私は顔から火が出るような気持ちになった。
 思えば、彼こそは一流の大作家なのだ。今更、私にような素人に作家の心構えなど説かれるまでもない。あえてエルトナ風に言うなら、シャカに説法という奴だ。
 気まずい沈黙の中、パニーニは一言も言い返さず、ただにこやかに頷くのみだった。
 そして

「おお~悲しい~♪ 断られて私は悲しい吟遊詩人~♪」

 歌いだした。何を考えているのやら、どうも居心地が悪い。
 とはいえ、私自身、納得のできない依頼は受けたくない。この件は保留とさせてもらうとしよう。
 引き止めるような吟遊詩人の歌を背に、私は魔法の絨毯を取り出し、村を出た。

 一つ、気がかりなことといえば……
 彼はこの状況を「作家の職業病」によるものと推測していたようだが、アイリは病弱な少女でもある。
 もし、職業病ではない方の病気の影響だとしたら。暗い想像が脳裏をよぎる。
 もしそうだとすれば、この村は永久にこのままかもしれない。魔女も英雄もフィナーレ辿り着くことはなく、永遠の間奏曲を奏で続けるのだ。
 そして、アイリ自身も……。
 ……いや、やめよう。私は首を振った。悪い方に想像しても得るものは無い。
 偽りのレンダーシアを巡り、もう一度ここに戻ってきた時、全てがハッピーエンドを迎えていることを祈るとしよう。
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