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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2015-07-20 23:06:12.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~月に風が吹いたのか(6)【カンダタクエスト、ネタバレ注意】

 ラッキィの話を聞き終え、私は一息ついた。
 さて、これが作り話か真実か、その判断は難しい所だが……。

「キィ」

 ドラキーが鳴いた。

「作り話じゃない、って言ってるニャ。証拠もあるだとニャ」
「証拠?」
「キィ」  ラッキィは足元の黒い箱を翼の先で指さした。そういえば忘れていた。彼が月から持ち帰ったという謎の物体である。
 チチチ……と、箱についた二つのガラス玉が機械的な光を放つ。それはジスカルドの赤い眼光とよく似ていた。

「キィキィ」
「侵略者が使ってた機械だって言ってるニャ」

 黒い箱はラッキィに促されると、跳ね起きたようにその身を浮かせ、機械音と共に収納されていた手脚と、翼を展開した。
 そして、ザラザラとした合成音でこう言った。

「切りキザム、です、ワ!」
 そして鋭利な刃物となった翼を回転……させようとして、バランスを崩して地面に落ちた。ぷすぷすと、鉄の灼けるような音がして煙を上げる。

「キィキィ」
「カンダタに壊されて、可哀想だから連れてきた、だってニャ」
「可哀想って、お前な……」

 随分と物騒な台詞を吐いていたぞ、今。
 壊した方が安全に見えるが……

「キィキィ!」
「わかった、そう興奮するな」

 通訳なしで抗議を受け入れ、私はジスカルドに修理を促した。彼は修理用ロボットではないが、機械同士、簡単なメンテナンスぐらいはできるのだ。
 修理開始。私は鳥型機械を覗き込む。
 どう見てもただのアイアンクックにしか見えないのだが、ラッキィ曰く、月ではもっと黒くて緑だった、だそうだ。
 名前は「レなんとか」……とりあえずレディとでもしておこうか。

「どうやら、我々とは異質の技術が使われているようですね」

 ジスカルドがモノアイをぐるりと回す。苦戦しているようだ。

「直せるのか?」
「わからない部分が多すぎます」
「キィ……」

 沈むドラキー。私は、とある有名な物語から一文を引用することにした。

「わかるように直せばいいんだ」
「なるほど」

 キラーマシンは頷いた。
 こうして、宇宙から来たレディは彼のよく知るメタッピー系列の技術を応用する形で修復され、生まれ変わることとなった。

「チチチ……」

 黒光りするボディを振動させ、レディは翼を展開する。鳴り響く機械音。

「ありがとうゴザイマス、ワ!」
「キィ!」

 ドラキーがその周りを飛びまわった。レディもまたくるくる回り、二人して踊るような構図になる。体格が近いせいなのか、気が合うらしい。仲睦まじいものだ。これにて一件落着か。
 だが……
 私の顔に一転して暗い影が浮かんだ。
 なにしろ、私の仕事の方は全く進展していないのだ。
 カンダタは何処へともなく去ってしまったし、盗まれた本もそのままだ。今更追いかけて捕まるカンダタでもないだろう。
 こうなったら、彼が出没するという魔法の迷宮をしらみつぶしに探してみるか……?

「キィ」

 と、レディの周りを飛び回っていたラッキィは、思い出したように声を上げ、懐から何かを取り出した。
 ぼろぼろになった古い書物。まさしくメギストリスから盗み出されたそれだ。

「これをカンダタから?」
「キィ」
「だからちゃんと仕事した、って言ってるニャ」

 ラッキィは得意げに空に跳ねた。
 再び、メギストリス城。取り戻した書物を献上すると、国王代理は大袈裟な仕草で感謝の意を示した。

「もう見つからないと思ってたが、流石は魔法戦士団だな、頼りになるぜ。それにしても、一体どうやって見つけたんだ!?」

 私は曖昧な笑みを浮かべた。とても信じてもらえそうにない。
 せいぜい、月夜の笑い話。
 嘘か誠か妄想か。蝙蝠だけが知っている。
 窓の外に目をそらす。夜空には月が浮かび、ドラキーとメタッピーの影がそれを横切った。
 ヴェリナードへの報告書にはどう記すべきか、目下、私の悩みはそこである。


***


「……と、いう話です」

 夕暮れのザマ峠。私はリュートの音色を背景に、一連の事件を語り終えた。
 旅人は演奏の手を止めると、瞳を閉じたまま頷いた。

「とても興味深い話だね」
「信じる、と?」

 私は旅人の小さな横顔を覗き込んだ。
 彼は長い髪を風になびかせて顔を上げた。

「君と私が出会ったことも、これと同じくらい不思議な話だとは思わないかい?」

 穏やかな笑みを口元に浮かべ、彼は再びリュートを奏で始めた。不思議な音色に聞き惚れて、ラッキィは瞳を閉じた。

「この風の向こうに、私の知らない世界が広がっている。そう思うから、私は旅人なのさ」

 見上げれば、空には星。不思議な旅人は歌を紡ぎ続ける。
 月まで響けとばかりに、フォステイルは弦を爪弾いた。
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