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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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写真コンテスト

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ミラージュの冒険日誌

2015-07-26 16:36:56.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~永遠の夜と共に(2)【注:強ボス写真有り】

 二階から降り注ぐ弓矢と火球の雨、中央でグツグツと煮える大鍋からは、足の生えたトマトたちが次々と飛び出す。少し前まで寂れた雰囲気を醸し出していた夜宴館は、今や狂乱の渦に包まれていた。
 ふわりと浮かんだ水晶玉に腰掛け、それを見下ろすのは魔女グレイツェル。けたたましい哄笑がダンスホールに響く。
 私は立体的な戦場を駆けぬけながら、火球を飛ばす猫魔族たちに剣を振るった。まず、ホールを取り囲んだ彼らを始末しなければ話にならない。
 一方、仲間の武闘家は、どうやら魔女の元へ向かったらしい。臍を噛む。計算違いだ。酒場で雇った冒険者たちはこちらの思うようには動いてくれない。
 結局、雑兵は魔法戦士の私が一人で倒すことになった。その間、回復役の僧侶が持ちこたえてくれたのは僥倖と呼ぶしかない。

「さて、ようやく本番か」

 私は改めて魔女と向かい合い、剣を構えた。グレイツェルの赤い唇が薄く微笑む。背後では大鍋からトマトが溢れ出す。構わず私は間合いを詰めた。武闘家もそれに合わせる。
 剣と爪の乱撃が魔女のしなやかな肢体に襲い掛かる。グレイツェルは魔法の力場でそれを受け止めつつ、水晶の浮力に任せ、じわじわと後退する。その口元には、余裕の笑み。だが、剣を振るう私の手には、確かな手ごたえがあった。
 これならば……
 そう思った矢先のことだった。魔女がカッと目を見開き、牙をむくような凶暴な笑みを浮かべたのは。 「ようやく……本番かしら」

 そして魔女は狂ったように笑い始めた。
 狂気に満ちた高笑い。声はホールに幾重にも反響し、前後左右、魔女の嘲笑が私を取り囲んだ。と、同時に水晶がくるりと円を描いて私の周りを回り始める。合わせて身を翻すうちに、私自身の平衡感覚もくるくると惑い始めた。

「私は誰?」

 魔女が囁く。

「私を見て」

 魔女が呟く。

「私は、ここよ」 

 魔女の手招き。
 背後から、頭上から、いや、正面か……? 

「ホホホホホ………」

 高笑いが響く。片手を掲げる。爆光が館を包む。
 混乱、困惑、眩惑……幻覚!
 やがて光の中に、陽炎のように佇む影が三つ。
 気付けば、私の周囲を取り囲むのは、同じ顔を持つ3人の魔女だった。
 剣を構えたまま後ずさる。どれを狙えばいい? 3対の魔女の眼はその迷いを見透かしたように鋭く光り、隙を逃さず三位一体の攻撃を仕掛けてきた。
 周囲を取り巻き、回転しながら破壊の魔法を繰り出す。立て続けに、私の身体に衝撃が走る。僧侶たちの必死の援護も、その波状攻撃の中では無意味に思えた。

「ハッピーエンドって、何かしら」

 爆炎の中、唐突に魔女の一人が呟いた。そして答えを待たず、背後に迫った魔女が囁く。

「どうせ幸せになれないなら、二人で地獄に落ちましょう」

 クスクスと笑い声。

「あなたと一緒なら、案外、天国かも」

 正面の魔女が細い指で私の顎を撫でる。満身創痍となった私は、抵抗すらできなかった。せめて、挑発的な笑みと共に言葉を返すだけだ。

「……その台詞、言う相手が違うんじゃあないのか?」
「そうね……あの人はもう、私のものにはなってくれない」

 グレイツェルは一瞬、瞳を閉じ、そして潤んだ瞳を私に近づけた。 

「……彼の代わりが欲しいの」

 鮮やかな紅を引いた唇がそっと囁いた。熟れた、濡れた、真っ赤な……

「ウ、ソ」

 再び、閃光。光と熱の中で私の身体は高く舞い上がり、地面に叩きつけられた。鳴り響く魔女の嘲笑……。
 気付けば、私は本を手にしたまま、元の机の前にいた。  こうして、最初の挑戦は私の敗北に終わった。
 それから私は夜ごと、夜宴館に通い詰めた。魔女はいつも蠱惑的な微笑みと、冷たく攻撃的な瞳で私を出迎えた。宴はいつまでも続いた。
 一度は勝利したこともある。雇った冒険者ではなく、同じチームに所属する仲間たちと共闘した時のことだ。悪戦苦闘しつつも、辛うじて拾った勝利。
 だが、魔女の笑みは消えなかった。

「ハイ、よくできました。ご褒美をあげる」

 3つの水晶玉を残して、彼女は姿を消した。
 まだまだ負けたつもりは無いらしい。私自身、仲間に勝たせてもらったという気持ちがある。
 なんとか、あの余裕の笑みを消してやりたいものだ。
 私は再戦を誓いつつ館を後にした。

 あれから数か月。
 私は魔法戦士団の仕事が忙しく、夜宴館とは疎遠になっていた。
 だが、あの時と比べ、私の腕も多少は上がっている。装備も整え、そして戦術も練り上げた。
 今ならば、という気持ちがあった。
 今日、私は久しぶりに本をめくる。魔女を称える文字が躍り、童話の挿絵が生気を帯びて動き出す。
 夜宴館は以前と変わらず、静かに私を出迎えた。
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