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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2015-10-27 23:04:42.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~30の瞳

 天井から淡い緑光が降り注ぐ大広間。石畳に靴音を響かせ、私がそこに踏み入ると、彼は満面の笑みで出迎えた。

「相変らず、タフだな」

 高く見上げながら苦笑すると、彼は大きな笑顔をさらに巨大化させた。いつだって、彼は笑顔を絶やさない。一方、私は疲労困憊だった。

「これでもう、何度目だ?」

 問いかけても、笑顔。ややあって彼は大きく首をかしげる。これは訊いた私が悪かった。彼は自分の眼の数より大きな数字は数えられないのだ。

「まあ、何度でも構わんか」

 質問を切り上げ剣を抜くと、彼は単眼を輝かせ、嬉しそうに頷いた。何度目だろうと、一つ目。
 巨体を大きく揺らしながら、アトラスは棍棒を振りかぶった。人のよさそうな顔に油断ならぬ闘気がみなぎる。私は疲れた体に鞭打って剣を構えた。
 一瞬の静寂。そして緊迫。
 気合一閃、駆けだす足音と共に、張りつめた空気が解放される。
 アトラスの棍棒がうなりを上げる。
 本日、幾度目かの戦いの火ぶたが切って落とされた。  ことのおこりは、宿屋協会の発表だった。
 スペシャルふくびきの景品入れ替え。今後はメタキンコインが当たりづらくなり、メダルが当たりやすくなる。
 世の冒険者たちに言わせれば、メタキンコインはもう有り余っているので、ありがたい発表なのだそうだ。
 が、私の手元には、ほんの数枚。そして巷に流れる光導使到来の噂。
 というわけで、私は天井裏にしまっておいたスペシャルふくびき券を、とりあえず300枚ほど引き出してコンシェルジュの元へ向かった。
 なぜこんなに券を余らせているのかと言えば当然、引くのが面倒だからである。

「そんなアナタのために、もうすぐ10連ふくびきも始まるんですよ!」

 と係員は丁寧に教えてくれたが、景品入れ替え後では遅すぎる。間の悪いことこの上ない。
 ガラガラと乾いた回転音。一定の間隔で、色とりどりの玉が落ちてくる。その光景を眺めること300回。頭がどうにかなりそうだ。
 この苦行が、私の体力の大半を奪っていったことは言うまでもない。

 3位というのは、当たりそうで当たらないものらしく、300回引いて当たりは2度。結局6枚のコインが増えるのみに留まった。
 まあ、それはいい。
 問題は……

「はい、景品のアトラス強カード30枚です!」

 コンシェルジュは極上の営業スマイルでカードを差し出した。ずっしりと厚みのあるカード束を……。
 こうして、私のアトラス30連戦が始まったのである。

 さすがにこれだけの連戦に友人達を付き合わせるのは忍びなく、酒場で冒険者を雇っての挑戦となった。
 かつては強豪、難敵の名を恣にしたアトラス強だが、冒険者達の成長は日進月歩。今や雇われの冒険者でも問題なく戦える相手である。戦士の技が刃を砕けば、大地の怒りを避ける必要すらなくなるのだから、どちらが化け物かわかったものではない。

 とはいえ、危ない場面もあった。
 最近では雇われの僧侶達も、手際よく前衛の陰に隠れるようになった。今回の場合、同じく雇った戦士が壁役だ。
 だが彼らは地形を見極める目までは持っていないらしく、壁を背にした戦士の後ろにわざわざ回り込む姿が幾度も見られた。自ら袋小路に追い込まれ、範囲攻撃をもろともに食らう姿は見ていて危なっかしい。それでもなんとか耐えてしまうあたりが今の冒険者の逞しさなのだが。
 因みに私は一足お先に逆方向に抜け出している。一人だけ敵の逆方向に陣取るのは一般的には悪手とされているのだが、この場合、話が別である。
 私はアトラスの背後からそっと近づき、膝の裏目掛けて剣を突き出した。カクンと腰砕けになった巨人の身体に、戦士の大斧が振り下ろされるのだった。  こうして30連戦を潜り抜けた私の手元には……

「チョーカーが一つ、だと……?」

 現物1。破片91。これが30連戦の成果である。
 引きが悪いにも程があるぞ……。
 憮然とした表情の私を見つめ、アトラスは不思議そうに首をかしげた。

 だが禍福は糾える縄の如し。ここで運が廻らなかった分、合成運が廻って来れば帳尻は合うのだ。
 私はアクセサリ屋へと急行した。神よ、ホトケよ、ついでに……リーネよ!

「でっきたー、気に入ってくれたかな?」
「これが気に入った顔に見えるか?」  ウェナに吹く風も、近ごろは冬の冷たさを帯び始めた。いつだって、暖かいのはリーネの懐だけなのか。
 まあいい。少なくとも笑い話の種にはなる。
 強がりに混ざった溜息を風がさらって行った。時節の変わり目、新しい季節の風だ。
 さて、新しい季節にはどんな笑いの種が待っているだろうか。その時はもう間近だ。

「さて、どうなるかな」

 私は月夜に独りごちた。ウェナの水は月明かりに照らされ、さらさらと流れていた。
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