金属のぶつかり合う、甲高い音が響いた。
続いて破裂音。鉄の軋む鈍い音。火花が散り、装甲がひしゃげる。
細いフレーム脚が地に擦れ、ブルーメタルががっくりと膝をつく。
サジェが悲鳴を上げた。竜族の少年を狙い、振り下ろされた凶器を、紙一重で受け止めたのはキラーマシーンのジスカルドだった。
「どうして……」
眼鏡に映る敵影に、少年は逃げることもできず愕然と体を震わせていた。
実際、私もすぐには身体が動かなかった。完全に、意識外からの襲撃だった。
ジスカルドだけが、このことを想定していたに違いない。そして動くことができた。
だがその代償は大きかった。ジスカルドの装甲は完全にへし折れ、誰が見ても戦闘不能である。
「ジスカルド……!」
「下がれ、サジェ!」
私はようやく剣を抜き、サジェと敵の間に割って入った。"解放者"たちもそれぞれお武器を手に取ったが、まだ距離がある。
突如出現したこの敵に対し、しばらくは私一人で耐えねばならない。
不気味に光る無機質な瞳で、敵は私とサジェを睨みつけた。
そこからの戦いは、あまり覚えていない。考える余裕すらなかった。兎に角、何をおいても、まず背後の少年を守らねばならない。それだけだった。
盾を突き出し、剣で敵の切っ先を切り払いながら敵の猛攻に、必死で耐える。だが私は魔法戦士。守りの技に長けているとは言い難い。
払い損ねた敵の得物が腿の肉をえぐった。苦悶の呻きを上げながら、なんとか堪える。続いて炎が体を襲う。痛みが熱に変わる。
「ミラージュ!」
「下がれ! 私の後ろに居ろ!」
飛び出そうとした少年を私は一喝した。
脚をやられ、もはや動けそうにない。サジェが位置を変えれば、守り切れない。
脳裏に浮かんだのは、カーラモーラの青年、バジューの顔だった。あいつはまだ子供なんだ。誰かが守ってやらなければ、と訴える。
歯を食いしばる。まったく、損な役目を引き受けたものだ!
「こんなことならパラディンの修業をしておくべきだったな!」
私は守りだけに専念して時間を稼ぎ続けた。
足音が聞こえる。もう、すぐそこだ。間に合ってくれよ……
突如、痺れるような刺激が私の肉体を襲った。ぐらりと視界が歪む。
倒れる間際、サジェの顔が見えた。悲痛な顔だ。悲鳴は、聞こえない。
殺到する、冒険者たちの姿……。
そして、私の意識は途切れた。