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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2017-06-26 22:42:06.0 テーマ:その他

御雷(3)~なりきり冒険日誌【注:ver3.5ストーリーに関する記述有り】

 身を切るような荒んだ風が上空より吹き付ける。石造りの竜頭像は己を削り取らんばかりの烈風に身をさらし、今も健気に祭壇を守っていた。
 その先には翼持つ首なし竜のような浮遊島。ナドラガ神の祠である。
 準備に追われるうち、二日間はあっという間に過ぎ、烈風の岬には疾風の騎士団の中核をなす戦士達が集結していた。
 少数精鋭とはいえ、"解放者"を中心に腕に覚えのある冒険者揃いである。彼らは天神鹿の背に乗ってあの浮遊島を目指す。
 私のお供はリルリラと、ドラゴンキッズのソーラドーラ、ルナルドーラ。二匹の仔竜もコドラゴラムを使えば一人ずつを運べるはずだ。
 ミカヅチマルの姿は、まだ無い。
 風が流れ、雲が流れる。
 定刻。
 ……と、静かに、流れる風が形を成したかのようにどこからともなく、しなやかな四肢と鹿角を持つ神獣の姿が現れた。
 冒険者たちがどよめき、リルリラはぺこりと頭を下げる。私は跪きつつ、辺りを見回した。
 黒毛の巨馬の姿は無い。

「さあ、私に乗って下さい。この暴風を越え、あなた方をナドラガの祠へと届けて見せましょう」

 神獣は宣言し、解放者達はその背にまたがった。
 二匹のドラゴンキッズも飛竜と化し、翼を羽ばたかす。リルリラがルナルドーラの背に乗った。
 ソーラドーラが鼻先で私をつつき、騎乗を促す。
 だが、私は首を左右に振った。訝し気に竜が首をかしげる。

「すまんな、ソーラドーラ。先に行っててくれ」

 飛竜の角を撫で、私は立ち上がった。
 後ろから、硬質な蹄の音が聞こえてきた。
 振り返らずに私は言った。

「まさか、見送りに来たわけじゃああるまい?」

 怒ったような嘶きが風をかき分けて耳に届いた。
 飛竜が飛び立つ。天神鹿が空を駆ける。私はミカヅチマルの背にまたがった。

「見せてもらうぞ、特訓の成果とやらを」

 ぴりりと痺れるような震えが黒色の馬体から伝わってきた。
 武者震いだろうか。
 ミカヅチマルはただじっと、風を見つめていた。

 飛竜となって飛び立ったソーラドーラの背中を、ミカヅチマルは無言で見つめていた。
 何か思うところでもあるのだろうか。私が顔を覗き込むと、今度は私の方をじっと見つめた。不愛想な顔が、笑ったように見えた。
 私が脇腹を脚で叩き、前進を促すと彼はゆっくりと歩行を始めた。
 次に彼が見つめたのは、因縁浅からぬ天神鹿の背中である。
 こちらは先ほどとは違い、目を細め、一挙一動を見逃すまいと注意深く観察する表情だ。
 天神鹿は左右に軽やかにステップを踏みながら、目に見えぬ道を蹴るようにして空を駆けていく。私は一度だけ、同じような走り方をする生き物を見たことがある。勇者をその背に乗せた、純白の天馬だ。
 黒毛の巨馬は神鹿の走りを見届けると、ようやく脚に力を籠め始めた。いよいよ、彼の真価が試される時だ。
 神の加護なくして超えることはできないとされるこの岬を、かつて神に挑んだ蛮獣の子孫は超えられるのか。
 黒い巨体が風を切り疾走する。徐々に速度を上げつつ、右へ、左へとあえて蛇行するような動きを見せる。
 私は彼のステップが、天神鹿のそれをなぞっていることに気づいた。あえて遅れてきたのは、神獣の動きを観察するためか。
 竜頭の像を超え、目の前には峡谷が広がる。吹き付ける烈風。
 そしてミカヅチマルは地を蹴った。  神獣の切り開いた道を、一歩も違わず辿り、風に乗る。力強い疾走感と共に浮遊感が私の身体を襲った。
 空を駆ける。
 荒れ狂う業風の中、わずかに残された道を彼は確かに捉えていた。
 天神鹿の背は遠い。だが焦らず、一歩ずつ、かの神獣が歩む道を追い続ける。
 これが、彼の出した答えだ。宿敵に追いつくため、あえて宿敵の技を真似てみせる。プライドの高い彼にとって、それは苦渋の決断だったに違いない。
 私はふと、先ほどの視線の意味を考えた。
 ソーラドーラはあのモンスターバトルロードで、勝利のためにあえて目先のプライドを捨てて見せた。
 私もまた、ヒューザの奴に追いつくため、その技を参考にしてフォースブレイクの強化に成功した。
 ミカヅチマルは、そのことを思い出していたのではないか。
 お前たちに負けるものかよ。
 誇り高く不愛想な荒馬が、そううそぶいたような気がした。
 天ツ風を追い、御雷が空に舞う。
 心地よい疾走感に包まれ、私とミカヅチマルは風の中を駆けぬけていった。
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