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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 133

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ミラージュの冒険日誌

2017-08-14 20:40:11.0 テーマ:その他

ナドラガンドの決戦(7)~なりきり冒険日誌【ストーリーネタバレ注意】

【注:ver3.5後期のストーリーネタバレを含みます】
                                  

第三話「神官トビアス」前編

「想像以上だな」
 トビアスは天を仰いだ。頭の二本角が床を向く。
「内外共に、な」
 私は脚を組み、報告書とにらみ合う。

 私とトビアスは互いの情報を交換し終えたところだった。私は街の様子を、トビアスは教団内部の状況を。
 大聖堂の二階、有力神官に割り当てられた部屋の一つが我々の戦略司令室だった。つまるところ、トビアスの私室だ。
 飾り気のない部屋である。実用一点張り、調度品一つ置かれてはいない。几帳面に区分けして並べられた本棚の中身が、持ち主の性格を物語っている。
 魔法戦士団が教団エステラ派と提携して以来、私は魔法戦士団と教団との中継役になっていた。自然、トビアスと顔を合わす回数も増える。
 最初のうち、トビアスは我々の介入を好ましく思っていない様子だった。が、事態が悪化し、教団員の中から寝返りが続出するに至り、竜族の部下よりも我々の方を当てにし始めた感がある。
 今日もまた、一人……それもかなり有力な神官が敵の軍門に下った。
「まさか彼が寝返るとはな」
「竜族であれば誰もがナドラガ神に祈りを捧げて生きてきた。誰が寝返ろうと、不思議ではないさ」
 不貞腐れたように神官はため息をついた。
「なるほど」
 私は肩をすくめる。
「我々は魔法戦士団はナドラガ神に対して何の信仰心も抱いていない。が故に、竜族以上に信頼できる、というわけだな」
「皮肉なことだが、その通りだ、魔法戦士殿」
 情けないことだがな、とトビアスは肩を落とす。
「しかし我々をあからさまに重用するのは控えた方がいいな。上に立つものが一つの組織を重用しすぎると、あらぬ疑いを持つものが現れる」
「ああ……」
 私の忠告に、トビアスは額に手を当て、首を大きく振った。
「魔法戦士殿、これは誰にも言ってくれるなよ」
 私が頷くと、彼は天を仰ぎ、両手を大きく広げて胸の内を吐き出した。
「まったく、面倒な話だ!」
 そのまま歯を食いしばる。
「人の上に立つというのが、こうも面倒なことだとはな!」
 私は笑った。そして、その程度の愚痴すら言う相手を選ばねばならない彼の立場に同情した。
 初対面のころ、彼の第一印象は、鼻持ちならないエリート神官だった。自分の力に絶対の自信を持ち、自分の正しさにはそれ以上の自信を抱いていた。
 あの頃から、彼も随分と変わった。
 いくつもの挑戦と挫折を繰り返し、何度となく分厚い現実の壁に跳ね返されてきた。そして、今も。
 今度の壁は、知恵を試す仕掛けでも力を試す守護者でもない。彼が守ろうとして来た人々、そのものである。
 執務机を囲む質素な本棚には、竜族の歴史書やナドラガ教の経典が所狭しと並んでいた。その重みが今、彼を押しつぶそうとしているのだ。
「貴公の種族は、ウェディというんだったな」
 "ナドラガンド年代記"の背表紙がズレているのを几帳面に整えながらトビアスは言った。
「ああ」
「どんな種族なんだ?」
「見てのとおりと言いたいが……」
 私はヒレをピンと伸ばしながら首をかしげた。
「いわば歌と舞いを重んじる海の部族だな。崇める神は女神マリーヌ。よその種族からは陽気なばかりで軽々しい集団だと思われているそうだが、別にそんなことは無い、と主張しておこう」

 それから私はウェディについていくらかのことを語った。ウェナ諸島のこと、マリーヌ神との関係。女王陛下と恵みの歌、猫魔族との関係……
 トビアスは"ナドラガンド年代記"の背表紙を弄りながら聞いていた。1冊目のズレを直したところで、2冊目が引っ張られて余計にずれたらしい。
「いい民族らしいな」
「ウェディの全てが良いとは言わんが、まあ、悪くはないつもりだ」
 自然と胸がそる。一方、トビアスは手を滑らせて床に落としてしまった"ナドラガンド年代記"を屈みこんで拾っていた。
 神官の手が竜族の歴史を拾い上げる。ぶ厚く重い。
「……貴公には、我々竜族がさぞ滑稽に見えるだろうな」
 青年は今日何度目かの溜息と共に床を睨みつけた。
「我々竜族は誇り高き民族だと自負してきた。それが一皮むけば、この有様だ。自分の生き方を自分で決められず、誰かを疑い、誰かを非難し、誰かに恐怖し!」
 "ナドラガンド年代記"が震えていた。
「……そして結局は安易な逃げ道を選ぶ」
 トビアスは斜め上を見上げながら自嘲的な笑みをこぼした。
「もっとも、一番滑稽なのは、仮にも指導者でありながらそれを抑えられないこの私だが……」
 年代記を本棚に押し込む。乱暴な音がした。
 そしてしばらく、沈黙が支配した。
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