「これに効果があるかは分からないが…」
そう呟くクマヤンの目先には、立派な細工が施されたサーベルが、金色の宝箱に収められていた。その中には、いかずちのたまも大量に入っていた。それは、
雷帝が崩れた中から見つけ出した雷帝の剣だった。
「いやー大魔王城で、くつろげるなんて思ってもみなかったよ」
ウサみんがソファで寝転びながら、言っている所は大魔王城の客間だった。
クマヤンたちは雷帝の城から出て、大魔王城で休息をとっていた。
「大魔王が知り合いで良かったな」
ソファに座り、サーベルを魔法布で丁寧に拭きながらクマヤンが言う。
「一緒に戦った仲だからね!」
マユミが胸を張って言った。
「とりあえず、これで試してみるか」
そんなマユミの話を聞き流した。クマヤンは魔法布で、サーベルの魔瘴の
穢れを拭き終えると、立ち上がりサーベルを構えた。
「ちょっと!ここで試さないでよ!」
ぱにゃにゃんが驚きながらクマヤンに注意したが剣は淡く光り、パチパチと
小さな音がなり出したがすぐに収まった。
「やはりこれは雷帝の剣に違いないが、殆ど力が無くなっているな」
クマヤンが構えを解くと、雷帝の剣は元に戻った。
「考えてた通り、あの姿でいた事で力を消耗したのでしょうか?」
「地獄の帝王の正体は、雷帝でなくて剣だってアレね?どうだろうね…」
ねるの問いに師匠であるリンドウが応える。
「憶測でしかないけどな」
雷帝の城から出る前に、クマヤンが言った事だが確証は無かった。
「あいつ、喋ったけどその剣は魔物じゃないしね」
ソファで仰向けに寝たままのウサみんも疑問に思った事を言う。
(権力闘争をしている中で、魔瘴が急速に拡大し誰も居なくなった城で、
残った剣が魔瘴を使い地獄の帝王の姿を手に入れたと言うのは無理があるよな。)
喋るのは雷帝の思念が残っていたと、言えるが確たる証拠も無いので、
ウサみんにクマヤンは何も言えなかった。
「まあ、雷帝の剣を持ち帰れたから良いけどな」
大魔王城の客間での話を、思い出してクマヤンは呟いた。真相がどうであれ、
行方不明とされていた雷帝の剣を、手に入れた事は想像以上の成果だった。
「復活方法を考えないと」
これ以上、剣の力が失くならない様にいかずちのたまを
気休めに入れた箱を閉め鍵を懸け、屋敷の地下にある倉庫を後にしながら
呟いた。
「まずは本を読み直すか」
昔、読んだ本の中にいなずまのけんの力を使って、ロトの剣を復活させたのを
憶えていて、他にも復活方法が無いか探そうと考えていた。
「事と次第によっては、また魔界に行くことになるかもな…」
魔界の冒険は雷帝の剣を手に入れた事で、一旦終わったが
剣の復活のためにまた、行くことになるかもとクマヤンは感じながら屋敷を
あとにした。