アストルティアの外の時間で30年前の今日、多くの冒険者の探求の礎になったとされる伝説の勇者が、アレフガルドの地に降り立った。
そんな記念すべき日に誰かと乾杯がしたくて、アストルティアをちょっと離れて、ロッポンギの町にあるルイーダの酒場を訪れた。
知る人ぞ知る酒場。店内には伝説の勇者が手にしていたという剣が飾ってある。
愛想のないお姉さんに案内されて、一番奥のすみっこのテーブルに通された。
記念日のはずなのに、客はまばら。
たくさんあるメニューの中から、勇者姫の帰還を祝って考案されたカクテル、勇者姫アンルシアのブレイブ・ハートを注文する。
「誰かと乾杯できないかな・・・」
キレイな色のカクテルに口をつけながら、店内を見渡す。
ふと見ると、板みたいな機械を熱心に操作しながら、ひとりでお酒を楽しんでいる人がいた。
「あの人ひとりかな・・・。声かけてみようかな」
しばらく迷って、意を決する。
「あの・・・よかったら乾杯しませんか?」
見知らぬ人にいきなり声をかけられて警戒したのか、けげんな顔で見られる。
それでも、今日が伝説の記念日だから乾杯したいと言うと、快く応じてくれた。
「新しく発見されたレシピにオグリドホーンを使うらしく、価格が高騰してる」
かなり熟練の冒険者らしく、いろんな情報を教えてくれた。
話に花が咲き、ホイミスライムのフルーツジュレポンチが溶けかけていたので、あわてて促した。
自席に戻って、カクテルの残りを飲み干す。時間があまりなかった。
「お邪魔しちゃってすみませんでした。よい旅を!」
帰り際にもう一度声をかける。
「よい旅を!」
グラスを片手に、笑顔で手を振ってくれた。
名前も聞かずに店を出る。一期一会のステキな出会いと別れ。
いつか、アストルティアですれ違ったりして・・・
2016年5月27日、ステキな乾杯をありがとう!