「だめだ!トロッコなんか作れねぇ!そんな予算はねぇっ」
武器鍛冶ギルドマスターのラセドさんが叫んだ。
もう、何日も同じ会議してる・・・。
「だいたい、後処理設備の効果も分からない内に予算の追加なんかできるかっ!」
グレンの採掘をもっと効率よくするために、武器鍛冶ギルドで行っている後処理の一部を採掘現場で行う。
今、ギルド内の後処理を行っている場所を、新たに武器鍛冶の場所として開放する。
ドワチャッカ大陸アクロニア鉱山でのノウハウを提供しながら、グレンの採掘処理の改革をお手伝いしていた。
室内に暗い雰囲気が漂う。
「やはり、鉱石を運ぶ人足を手配しないといけませんな。」
「ここは、これまで通りか・・・。」
後処理をした鉱石を運ぶためのトロッコは、ドワチャッカ大陸では見慣れた光景だったけど・・・・
緩急著しく、地質の硬いオーグリード大陸では、線路を敷くのにも多大な労力が必要になる。
会議出席者もみな無言のまま。
これまで通り、これからも鉱石は人の足で運ぶ方針で決まりそうだった。
「あ・・・あの」
部屋の入口で警護していた若い兵士が沈黙をやぶった。
会議の外からの発言に、みんな反応する。
「なんだ、何か言いたげだな」
ラセドさんが、暗い雰囲気のまま話の続きを促す。
「私たち若手兵士は、基礎訓練の一環で岩を抱えて歩いているのですが・・・」
「だからなんだ」
「鉱石の運搬を、訓練の一環で行えたらと思って・・・・」
「!!!」
その場にいた誰もが顔を見合わせた。
「それよ!」
武器鍛冶ギルドのお世話をしているシャナンさんが喰いついた。
「鉱石の運搬を足腰の鍛錬として、若手兵士に担ってもらう!一石二鳥だわ!」
ただ岩を運ぶのではなく、鍛錬の一環として掘り出された鉱石を運搬する。
考えそうで、誰も考えなかった方法。
一名を除き、みんなの顔がみるみる明るくなった。
「わるくないアイデアだが・・・ひとつ問題がある」
暗礁に乗り上げた議題に光が射したかにみえたのに、ギルドマスターのラセドさんの顔が晴れない。
みんな不安げにのぞきこむ。
「お、オレとジダン兵士長はあまり仲が良くない」
・・・・・・・・。
一同シーンと静まり返る。
「マスター、その理由は議論の余地がありません。すぐにジダン兵士長をお呼びして!」
シャナンさんは、バッサリ切り捨てた。
グレンの採掘をよくするために、グレンの人たちが協力してる。
オイラの手助けは、もう必要ないみたい。
後は、みなさんにお任せしよう。
「あ、あの・・・オイラ、アクロニア鉱山で使っている採掘道具の手配に向かいます」
「おお!取引商のイジウスに話を通してある、いい採掘道具を仕入れてくれ!」
苦笑いのラセドさんと笑顔のみなさんに見送られて、会議室を後にした。