「オレ、商売で失敗しちまって・・・」
チャジロはうつむいたままポツリとつぶやいた。
「道具屋だけじゃなくて、武器や防具も扱いてえって思っちまってさ・・・」
「うん」
「旅の商人から、すげえできのいいはがねのつるぎを仕入れたんだ。でも売れなくて・・・
たくわえ使い果たしちまった上、借金まで作っちまって・・・」
「た、タイヘンじゃん!」
「もうどうしたらいいか分かんなくなって、打ちひしがれてた。
そしたら、武器屋のチアマトさんが助けてくれたんだ・・・」
「そうなの!?」
「負債、肩代わりしてくれて・・・
オレが仕入れたはがねのつるぎ、武器屋と取引商のつながりでさばいてくれたんだ」
「へぇ、チアマトさんすごいね!」
「まったくだよ。オレ、あそこの武器屋しょぼいなって思ってたのに」
「あはは」
「まだ、負債ちょっと残っててさ・・・。仕事終わった後、チアマトさんとこで裏方の手伝いしてんだ」
「へぇーー!じゃあ、武器のこととか詳しくなったりしてるの?」
「え・・・まぁ、以前に比べたら」
「すごいじゃん、チャジロ!いつか本当に武器も扱えるようになるんじゃない?」
「はぁ?ムリだろ。こんな大失敗しといて・・・。
あ・・・でも、チアマトさんに、いつかお前にアグラニの武器屋も任せるときが来るかもな、なんて言われたことある」
「えーーーー!」
「冗談だろうけど・・・」
「そういうの、100%冗談で言う人いないと思うよ。
なーんだ、心配して損したっ。チャジロ、商人街道まっしぐらじゃん!」
「え・・・オレ、かなり落ち込んでて・・・・。あれ・・・?そうでもないのかな・・・」
その夜は宿屋で宴会♪
トリリさんは、いつもよりお肉多めのシチューを作ってくれた。
「それで・・・アクロニア鉱山で使ってる採掘道具も大好評だったんだ!」
「すげーな!オレもちょっとうれしいぜ。」
「えへへ♪」
「やっぱり、人が求めてるものを提供するのが大事なんだよな。
アグラニではがねのつるぎなんて、誰が買うんだよ。」
「反省はほどほどにー♪」
「うるっせーーー!トンのくせに」
いっぱい飲んでいっぱい食べて、本当に楽しい夜だった!