ここは……
凍てつく空気の支配する、悲しみの地。
幸せを知らずに育った子供たちが、幸せを知らずに消える場所。
「ねえ、まおん」
アストルティアの大陸エルトナではエルフ男子の間で女装が流行り、ウェナ諸島では空前のアフロブーム。
世界は混乱に満ちていた。
「なに」
ここは、荒廃した古都カミハルムイのスラム。
この日新たに、スラムのよどんだ空気を吸う幼子たちがいた。
住人はかなり訝しがる。
「誰も、拾ってくれないのね…」
見た目の似ない双子の片割れが、ぼんやりとそう言った。
「何がいけないのかしら。きちんと正装もして、無礼にならない程度には箱に優美さも出しているのに」
「見た目かしら。陰気くさいと誰も拾いたくはならないんじゃない?」
それなら、とポーズをつけてみる。
「魔界宮殿の姫主ですわ♪ どうかこの憐れな双子を拾ってやってくださいな」
「私たちを拾うと魔界の広大な領地を統治したり、莫大な財産で遊び歩いたり、たくさんの魔物や魔族にかしずかれたりできるわよ」
住人たちは無言で通りすぎる。
「何がいけないのかしら。…こんなに無視されるなんて、予想外」
「おそらく、あれね。プレミア感じゃないかしら。ここをこうして…」
「それなら…」
夜は更けるーー
「…何かの夢をみたきがするわ」
「…奇遇ね私もよ」
朝食の席で二人は頭を抱えた。
双子の頭に浮かぶ夢の内容は、なぜか思い出そうとするとプレミア感が浮かぶのだった。
少女たちは夢見する。