朝鳥の軽やかなさえずりが聞こえるーー。
昨晩降った雨は止み、葉に滴る水滴が小鳥たちの喉を潤していた。
[魔界宮殿の姫主アーミラ様、一命をとりとめ帰す]
魔界において、人間界でいう…伝書ドラキーと言うのだったかしら…の役目を果たす「残響」というカラクリ人形が、先日告げた報せだ。
あの事件の日以来、魔界の外れ、誰も寄り付かない場所にいる私たちの宮殿に、数えきれないほどの見舞い客がきた。
全員私たちを慕っているとほざいていたけれど、本音がどうなのかは分かりきっている…。
犯人は分からずじまいだ。
…いや、本当はーー
「まおんちゃん、どーかしたのっ?」
ハッと気づく。
横にはいつのまにか雪がいて、心配そうに私を覗き込んでいた。
「なにもしないわよ」
「そう? あっ、そろそろアーミラちゃんの様子を見に行く時間じゃない? お庭の世話はあたしがやるから、行ってきなよ!」
そう言ってひどく眩しく笑う。
雪やサキアにも、アーミラの看病はさせていない。 あの子に近づいていいのは私だけだ。
…それなのにこの子たちは気にせず笑う。
私にはそれが不思議でたまらなかった。
「…それじゃあ、頼む。分からないことは使用人に聞いて」
私はいまだ目覚めない双子の元へ、足を素早く動かして向かったーー
%PICID-430881379% 同時刻ーー
アーミラはベッドの上で、涙を流しながら目を覚ました。
(…何か、悲しい夢を見たわ)
部屋を見渡す。
どうやらここは、魔界宮殿の自室のようだった。
「あ…」
そうだ、セラだ。
可愛い可哀い妹。私たちの命を狙う者。
悲しみの果てに魔瘴と成り果てた、暗殺者…
「まずは、まおんに…会いましょう」
ふらつく体で立ち上がったその時だった。
カタン
「……アーミラ?」
聞き慣れた声がした。
「…っお早う、まおん…!」
少々霞む視界のせいか姿は確認できないが、間違いなくまおんだ。
「あなたね、私たちがどれだけ心配したと思って…!」
憎まれ口にも力がない。かすかに聞こえるのは涙声だろうか。
「ふふ、ありがとうみんなで心配してくれて。もう大丈夫よ。
ああまおん、もう少し近づいてくれないかしら…。あなたの姿が見たいわ」
「分かったわ」
「久しぶり、まお…ん…………ーー」
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「…………え?」
ーーなんで毛玉になってるの?