ゼツカの冒険日誌

襲ってきたのは
スカラベキングの群れだった。


スカラベキングはカッチュウアリの
上位種にあたり、カッチュウアリよりも
甲殻が厚く、斧でも断ち切れない硬度を
持った強力な魔物だ。


おそらく尖兵であるカッチュウアリを
倒されて怒りのあまり追いかけてきたのだろう。


だが傷ついた彼女と
私達二人ではどうにもならない
相手であるのは間違いなかった。


女
「私の命運もここで尽きるか…」

ワグナー
「お嬢さん…！」

女
「私が引き付ける…お前達は逃げろ」

クラウディア
「だめよ！貴女が逃げなさい！」

ワグナー
「私達とてオーガの端くれだ！
お嬢さんは逃げろ！逃げて…また
人を救ってくれ！あんたには
それができる！」

女
「あんた達…」

クラウディア
「あの村の連中を私達はとめられなかった…
目の前で起こる惨劇を見てるしかできなかった」

ワグナー
「それを償うときは今！
いくぞ、クラウ！」

クラウディア
「えぇ、あなた！」


そして私と妻はスカラベキングの群れに
突っ込んでいったのだ。


しかしスカラベキングの装甲に歯が立たず
あっという間に窮地に追い込まれた…。


女
「…くそ」




？
「このままでいいのか？」

女
「…」

？
「あのままでは時間の問題だぞ？」

女
「…契約だ」

？
「目を見えるようにか？」

女
「急げ！願いを叶えろ！」

？
「契約内容は聞かなくていいのか？」

女
「構わない…私の願いは」






女
「あの二人を助けてくれ」






？
「！！」

女
「おい、早くしろ！！」

？
「…あっぱれなり…久しく見る強き者よ…
私の名はドレフルア…契約を承った…」


刹那。


彼女の体が光に包まれた。





ドレフルア
「その身に宿せ、獣王の力を」






ドレフルア
「敵を切り裂け」






ドレフルア
「闇を引き裂け！」



ドレフルア
「そして絶えず燃え続ける炎となれ！」



女
「絶えない…炎…」




女
「絶火…」






女
「我が名は《ゼツカ》！！」


ワグナー
「？！」

クラウディア
「なに？！」


強烈な炎が彼女の体から吹き出し
あっという間にスカラベキングの
大群を焼き払った。


ワグナー
「ゼツカ…」



後に我が妹となる
《ゼツカ》誕生の瞬間だった。



～つづく～