昔の大工は功績を示すために、建てた建物の屋根裏に名入りの道具を置いて行く事があった。
時は過ぎ―――2017年。
0時頃、内装をやれと指示が来る。
現場に着くや否や、さっそく片づけから入る。
現場監督は物陰でタバコを吸っている様だ。
片づけが終わると、本題の内装に取り掛かった。
だが、誰も内装の仕様を知らなかった。
若いもんが取りあえず資材を置きまくる。
そして勝手に帰って行った。
監督が怒鳴る。
仕方なく代わりに片づけた。
あぁ、残業だ。もちろん無給。
そのあとはひたすら作業を続けた。
そして、余った廃材を拝借しつつ、
休憩の合間を縫っては秘密の部屋を作った。
差し入れの果物も独り占めだ。
ちっぽけで質素な部屋だが、自宅以外の場所に自分の部屋が密かにある。
心が躍った。