はるこの冒険日誌

神戸市在住のはるこです。
つまり、当事者ではありません。
とはいえ、いま多少の基礎知識をここに書いておくことは
それなりに意味がありそうなことに思いました。
大阪市民の方もそれ以外の方も、読んでなにかの参考にして
頂ければと思います。





１、東京特別区の話

我が国の首都にして第一の都市、東京は「東京市」のような
一つの自治体ではなく、23の特別区からなっています。
23の特別区は基本的に「市」と同じ機能を持っていますが、
上下水道や消防、公営交通機関などの運営は県に相当する都が
行っています。
また、「一部事務組合」によって行っている業務があります。
正規職員の採用や清掃業務がこれです。

東京市と東京府が23の特別区と東京都に改編されたのは
第二次大戦中の昭和18年のことです。
戦時体制にあって、政治・経済の統制を強化するためと
されています。
（東京府と東京市の力関係の問題という話を聞いたことの
　ある方もいるかもしれません。
　東京市は東京の都市部を管轄するため財政基盤が強かった。
　東京府は東京市を監督する立場なので、東京市が強すぎては
　面目が立たなかった、という話です）

現在の特別区はおおむね市と同じものと考えてよさそうですが、
戦後、区長の公選がなかった時期があったことや、
特別区が法制上普通地方公共団体と別に規定されていること、
「特別区≒市」という現状が住民による自治権拡充運動の
成果とも言えること、などは記憶の片隅に置いておいた方が
良さそうに思います。

東京の特別区には現在でも一般の市への移行を模索する動きが
あります。
これには基礎自治体としての立場が憲法で保証された市と異なり、
地方自治法で市に準ずる地方公共団体とされているに過ぎない
特別区の、自治体としての立場の脆弱さが背景にあるとされています。





２、現在議論されている大阪都構想とは？

さて、大阪都構想ですが、大阪を東京のような都制に移行する
のかというと、「府と市」を「都と特別区」に移行する
という意味では間違いではないのですが、異なる点もあります。
大阪市の広報などを見る限り、次のようなものになるようです。

・大阪市を４特別区に分割する
・４特別区の区議員の合計は現在の大阪市議員の人数と同じ
・現在の区はそのまま地域自治区として存続
・現在の区役所は地域自治区の事務所とし区役所の名称を残す
・一部の特別区では執務室不足を補うため中之島庁舎も利用
・一部事務組合を設立して体育館、斎場などを運営する





３、あまり語られていないこと

これは、いわゆる都構想を推進したい人は言いたくないこと
だと思うのですが、住民投票が賛成多数で可決されたとして、
広域自治体「大阪都」が誕生するわけではありません。（爆笑）

実は、大阪都構想には大阪市を４つの特別区に分割すると
いうことは確かに書かれているのですが、大阪府を大阪都に
名称を変更するということは書かれていません。
（ただし、法制上大阪府は「都」として扱われるようになります。
　地方自治法による都と道府県の違いは特別区があるかないかだけです）

今回の住民投票で決まることは、大阪市を４つの特別区に
ただ分割するというだけのことです。
そして、大阪市が行ってきた政令指定都市としての業務が
大阪府に移管され、一般の市の権限の一部も府に移管され、
一部事務組合という謎組織（笑）が設立されます。

視点を変えると、大きな権限を持つ大阪市が、法的に
（比較的という枕詞つきではあるが）不安定な地位しか
持たぬ特別区に変えられてしまうというなんだか損した
ような気分になる改革かもしれないのです。
（そして「大阪都」が自動的に誕生するわけでもない）





（続く）