※この日誌はフレンドのガスパール君と5/1に行った「自キャラの設定に沿ってロールプレイ(つまりは即興劇)しながらアストルティアを散歩する」二人企画を小説風にまとめたものです。
※出来るだけチャットの台詞をそのまま再現するようにしましたが、尺などの都合で編集している部分もあります。
※色々と生暖かく見守る必要があります(主に僕を)。
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「海だー!」
「海だねー」
ややあって、僕等は猫島に到着していた。
猫魔族の友人がいるのだが、実際に本拠地に来たのはこれが初めてである。
こちらに敵意はないものの、彼らからすればただの見知らぬウェディである者もいるわけで、空気は少し緊張していた。
とりあえずキャット・マンマーに挨拶するため、迷いそうになりながら奥地を目指す。
道中の湖で休憩がてら、互いの店を始めた頃の話や、僕の店に来る腐れ縁のパトロンの話なんかをした。
そろそろ行くか、と立ち上がり、進みかけたその瞬間、微かに恐れていた事態が起きた。
一匹の猫魔族が襲いかかってきたのだ。
咄嗟のことで反応できない僕をよそに、ガスパールは持っていたナイフで躊躇いもせず相手をねじ伏せた。
「さすがにここらじゃなんてことないな」
「あんまり乱暴は…」
「仕方ないだろ、襲ってくるんだ」
「でも…」
「ドーリィ」
ガスパールの声色が俄かに厳しいものへと変わる。
僕はすでに、何も考えず言葉を発していたことを悔やんだが、もう遅かった。
「僕らが何を作ってるかわかってるのか?
争いを有利にする食事だ。
やってることはクッキングデビルと大差ないんだよ」
――ちがう。
それは違う。
否定したかったけれど、言葉が思うように出なかった。
「…で、でもマスターは。料理は人を幸せにするんだって言った。
い…言ってたんだよ」
「なんだ…受け売りか?自分はどう思ってるんだよ」
「……」
「優秀なシェフのくせに!」
ガスパールが声を荒げる。
どうしてそんなに激昂する…?
なおも俯いて、煮え切らない僕の態度にますます苛立ったのか、彼はたちどころに拳を振り上げた。
――彼の体格は、他と比べても珍しく小柄だ。
が、そもそもからして、鍛え方が違う。
貧弱な僕は彼の拳を受けてあっけなく地面に転がされてしまった。
「痛……」
「僕は今、なにも食べていない。
だけどバトルステーキを食べたらもっと強い。
ドーリィの得意な料理だな。ちゃんと、考えてくれ……。」
痛みとショックですでに涙をこぼしている僕に向かって、彼は続けた。
「争いを終わらせるには、勝つか負けるか、だ。勝つための道具なんだ、料理は。
終わりに近づける道具を作ってるとも言えるんだよ。
行こう、ドーリィ。……悪かったな」
料理することでしか、世界と繋がれないと思っていた。
だから……
自分が世界に与えている影響のことなんて、考えたこともなかったんだ。
「……ガスの言ってることは正しいよ。
それでも……
僕には料理しかない」
気持ちはまとまらないまま、陰鬱とした気分で巨猫の巣へと向かった。
(続)