一見の客でしかないラルさんの誘いは当然のように断られました。
店主の“わら”さんは意外にもこの店の二代目で、
諸々の名付けやラーメンの基礎は初代が築いたのだとか。
すっかり藁屋の味に魅了されたラルさんは店に通い続け、
様々な話をわらさんから聞かされるほどに親しくなりました。
そして訪問回数が100を越えようかという頃、
ついにわらさんの方からドワ子集会への出店を申し入れる電話が。
後日、小躍りしながら藁屋を訪れると深刻な顔をしたわらさんがいました。
前店主である両親から直前で猛反対され、辞退したいと伝えてくるわらさん。
厚い眼鏡で表情は窺えないが、拳を握りしめ震わせていることから
悔しさを感じているのは瞭然。
ドワ子集会に藁屋の味で挑戦したいという彼女の意気込みは、
ラルさんも痛いくらいに理解していました。
元々藁屋のラーメンは寒冷なガタラに合わせた一杯なため、
様々な場所へ遠足するドワ子集会では醜態を晒すだけだ。
反対の理由は納得できるものでした。
ドワ子集会の準備を進めながらも藁屋の味が忘れられないラルさん。
部外者に解決できる問題ではないため歯噛みするしかありません。
それでも諦め切れないラルさんは、悩み抜いた末に一つの道に賭けることにしました。
ラルさんは再び藁屋を訪れ、次のように提案したとされています。
「わらさん。あなたの直面している問題が全てクリアされるまで、
私はあなたを待ち続けます。何年でも待ちます。
そしていつか出店して頂ける日が来たら、
こちらの書類の通りいつでも受け入れられるようにしておきます」
提示された紙には藁屋ドワ子集会店の店舗見取り図が書かれていました。
ラルさんが選んだのは信じてひたすら待つこと。
あまりにも真摯で誠実な提案に、わらさんの瓶底眼鏡の奥がキラリと輝きました。
その後。
ドワ子集会を運営するラルさんの元にわらさんがやってきました。
「ラルさんお待たせしました。両親の説得はできなかったので、
藁屋の名前は使えない。だから店名は“わら屋”で行く。
これで良ければ、ぜひドワ子集会に出店させてください」
こうしてドワ子集会の人気店“わら屋”が誕生したのでした。
(終わり)
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