※本件、Ver4.0の微妙なネタバレになりそうなので
閲覧の際は、微妙にご注意ください。
『お頭、飯の時間ですぜ』
「ぁはい。も少ししたら行くでござるよ。」
いつしかお頭と呼ばれるようになっていた私は─────
─────未だ牢にいた。
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エテーネ国王から未来予知的な公然自爆罪を吹っ掛けられた私は
王国軍区画の地下牢に入れられた。
潜在犯扱いのため死罪ではないとの説明だったが
犯行予測により1年間の懲役だという。気の長い話だ。
周囲を兵に囲まれていた上
いつの間にかエテーネルキューブが一部機能をロックしてしまい
現代にも帰れず、ほぼ詰み状態であった。
(後から分かったことだが
OS解析の結果、姉が使った「疑似アクセス」が生きていたため
短時間ながら遠隔操作で現代を覗くことができた。
ということで毎週日曜早朝に私を見かけた人
あれは質量をもった残像です。いいね?)
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あれこれ考えるのが面倒になった私は
脱獄は考えず、囚人として過ごすことにした。
刑期の半分程を終え、もうすぐ折り返し地点。
服役生活は出費の心配をしなくていいので楽だったが
3食昼寝付きの代わりに労働などを科せられた。
農家の手伝い、錬金素材の加工や、器具の調整などが主だったが
そもそも服役期間を設けない国風のため
ネタがあまりないらしく、時々変なこともさせられた。
あるとき、『冒険者による生活の知恵講座』ということで
『火炎斬りを使った美味しいパンの切り方』
を実演したところ、主婦層にちょっとしたブームが起きたらしく
今ではキィンベル中の奥様が片手剣スキル持ちらしい。
逆に一部の旦那さん方には不評だったようで
「カミさんが更に狂暴化した」と軍に苦情があったそうだ。
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…さて。長いこといると、変に貫禄もついてくる。
服役生活に慣れるころには
短期で入ってくる囚人の話し相手になることが多くなった。
酒場の乱痴気騒ぎなど、軽犯罪でよく捕まる輩とはほぼ顔見知りになっており
元々山賊扱いされていたせいか、いつしか『お頭』と呼ばれるようになった。
…終いには看守までそう呼び始めるのだから如何なものかと思ったが。
まぁ、信頼してくれてるのか…一応模範囚だし。
親しみを込めてそう呼ばれるのは、悪い気がしなかった。
1年間とはいえ、この生活も案外楽しいんじゃないか─────
───事が動いたのは、そう思い始めていた、矢先のことである。
-続くとさ-