※本件、Ver4.0およびそれ以前のネタバレを含む可能性があります。
閲覧の際は、ご注意ください。
薄暗い空間に剣戟の音が響く。
カート 『王宮中の兵士を下した割には一撃が手ぬるいな』
カートが槍を大きく横に薙ぐ。
りゅうせき「スーパーアーマー状態で槍振り回す看守とか聞いたことがないぞ
ロ○ドランの黒騎士かお前は」
すかさず後ろに飛び退いた私は、先程貫かれた脇腹を押さえた。
ピコン 『ちょっと、あんまり余裕ないんだから怪我増やすんじゃないわよ!』
妹が敵兵の攻撃を受け流しつつ【太陽】と【教皇】のカードを投げる。
脇腹の傷を塞ぐと同時に、タロットの加護が身体を覆った。
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エテーネ王宮からの逃亡を図った私達は
牢屋の看守、カート率いる人間兵/魔法生物の混成部隊により
袋小路へと追い詰められ、やむなく刃を交えた。
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看守のカートは予想外の強さを誇り
並みの兵士に用いてきた攻撃ではびくともしない上
命中率の高い【一閃突き】に【さみだれ突き】など
一兵卒にあるまじき技の数々を繰り出してきた。
り 「ちと硬すぎやせんかえ…?」
カ 『ふはははは!!私のHPは5万だ!!!』
シンイ『カートさん、HPとか言っちゃいけませんよ』
ピ 『シンイさん、ツッコむとこそこじゃないと思うの』
何そのデタラメな数字。
カ 『終わりだ!』
彼の槍が紫電を纏う。
り 「おわっぷ!?何考えてんだ!こんな混戦状態で大技使うんじゃない!!」
制止も間に合わず、槍は地面に突き立てられた。
この看守、この状況で【ジゴスパーク】をぶっ放したのである。
放たれた雷は我々や兵を含め、その場にいた人間を吹き飛ばし
槍の突き立った地面や付近の壁にいくつもの亀裂をつくった。
とっさに側転し受け身をとった私は、間髪入れずカートに飛び掛かった。
我を失った怒りの一撃に、槍を引き抜いたカートが応じる。
り 「そんなに殺し合いたいか貴様…!!!」
カ 『いや、その必要はない』
り 「!?」
切り結ぶ瞬間、カートは私にしか聞こえない声で言った。
飛び退いてもう一度打ち合う。
カ 『安心しろ、仲間には事前に伝え、敢えて受けてもらっている。無事だ。』
周囲を見回す。向こうでうなずいているのが見える。よく見ると見知った顔だ。
意図を理解した私は冷静さを取り戻した。
カ 『壁にヒビを入れた。あと一息で壊れるだろう。
確かお頭の手持ち魔法は自爆ではなかったな?』
り 「ふむ。命ではなく魔力を放つ呪文だ。防ぐ術がある。
…おまいさん、最初から茶番にするつもりだったのか」
カ 『兵の負傷の具合を見れば、お頭の考えなど大体わかるものだ。
私含め全員に魔結界を張ってある。遠慮なくぶっ放して逃げろ。
転送装置を再起動してある。入口へ引き返せ。』
り 「…HP5万はどうした?」
カ 『…そこはツッコまないでくれ。ちょっと言ってみたかっただけだ』
HP5万さんは微妙に恥ずかしそうにそう宣った。
振り向くと、妹も誰からか聞いたようだ
気を使ってその場の全員に【世界】のタロットを使っていた。
全ての戦闘参加者に【マホステ】がかかる。
それを確認した私は徐々に魔力を練り上げた。
魔力を練りながら私は考えていた。
周りが味方である安心感からか、気が抜けたのだろう。
長い半年間だった。
いろんな人と知り合った。助け合った。傷つけ合いもした。
いろいろなものが溜まったまま去ることになる。
いつか諸々清算できる日は、来るのだろうか、と。
練り上げた魔力が臨界点に達したその時。
『バァン!』とドアが勢いよく開かれた。入ってきたのは王様である。
ドミネウス王『間に合わなんだか…ッ!』
り 「大丈夫、自爆じゃないし、誰も死なない。」
しかし。
ド 『あー、その、な。先日神殿の省スペースのため
科学者を呼んで宮殿の動力炉を移設したのだ…』
…どうしようとても嫌な予感がする。私は心の中でBボタンを連打していた。
ド 『…そこの床下に』
現場一同「『『『『『『『『ウッソだろお前』』』』』』』』」
2秒後、エテー王宮最奥、時見の神殿は、大爆発を起こした。