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聖者

シーン

[シーン]

キャラID
: YX176-339
種 族
: エルフ
性 別
: 男
職 業
: 僧侶
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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シーンの冒険日誌

2019-07-23 17:45:27.0 テーマ:その他

吾輩はえるおである(2)

吾輩の主人は滅多に吾輩と顔を合せる事がない。職業はユーチューバーだそうだ。終日書斎に這入ったぎりほとんど出て来る事がない。家のものは大変な視聴回数だと思っている。当人も大物であるかのごとく見せている。しかし実際はうちのものがいうような大物ではない。吾輩は時々画面越しに彼の書斎を覗いて見るが、彼はよくブツブツ独り言をしている事がある。時々クソ戦士が、コロキチが、と不満を垂れ流している。

  彼はドチビで皮膚の色が緑色を帯びて弾力のあるずんぐりとした体型をあらわしている。その癖に大飯を食う。大飯を食った後でハツラツ豆を飲む。飲んだ後でRTA実況動画をひろげる。二三◯分観ると眠くなる。睡眠耐性ゼロでよく寝落ちする。これが彼の毎夜繰り返す日課である。

  吾輩はえるおながら時々考える事がある。ユーチューバーというものは実に楽なものだ。人間と生れたらユーチューバーとなるに限る。こんなに寝ていて勤まるものならえるおにでも出来ぬ事はないと。それでも主人に云わせるとユーチューバーほどつらいものはないそうで彼は友達が来る度にランキングがどうとか不平を鳴らしている。

 吾輩がこのマシンへ住み込んだ当時は、主人以外のものにははなはだ不人望であった。どこへ行ってもふしぎなちからでかき消されて操作してくれ手がなかった。いかに珍重されなかったかは、今日に至るまで名前をああああから変えてくれないのでも分る。吾輩は仕方がないから、出来得る限り吾輩を入れてくれた主人の要望を受ける事をつとめた。

  朝主人が討伐買いをするときは必ず2000G以下の列に並ぶ。彼が職人をするときは必ずそ会心が出るよう祈る。これはあながち主人が好きという訳ではないが別に構い手がなかったからやむを得んのである。その後いろいろ経験の上、朝は水糞、夜はキラキラ、天気のよい昼はコロへ殴り込む事とした。

  しかし一番心持の好いのは夜に入ってここのうちの小供のパーティへもぐり込んでいっしょに戦う事である。この小供というのは五つと三つで夜になると二人が一つアカウントへ入って一画面でプレイする。吾輩はいつでも彼等のパーティに己れを容るべき余地を見出してどうにか、こうにか割り込むのであるが、運悪く小供の一人がサポでないことに気づくが最後大変な事になる。

  小供は――ことに小さい方が質がわるい――中に人が入ってる入ってるといって夜中でも何でも大きな声で泣き出すのである。すると例のドワオ似の主人は必ず眼をさまして次の部屋から飛び出してくる。現にせんだってなどは邪神の宮殿にソロで放り込まれた。

 吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は広場クレーマーだと断言せざるを得ないようになった。ことに吾輩が時々同衾する小供のごときに至っては言語同断である。自分の勝手な時は10億バラまけといったり、僧侶を最強にしろといったり、サイレント修正を疑ったり、広場利用一時停止を食らったりする。しかも吾輩の方で少しでも手出しをしようものなら家内総がかりでセキュリティの総点検を行い、トラッキングクッキー扱いする。この間もちょっとストーカー行為に及んだら相方が非常に怒ってそれから容易に相方ハウスへ入れない。配信中でも一向平気なものである。

  吾輩の尊敬する筋向のプク君などは逢う度毎に人間ほどネチケットが薄いものはないと言っておらるる。プク君は先日毛玉のようなサブを四疋産まれたのである。ところがそこの家のバドが三日目に飽きて四疋ながら削除して来たそうだ。プク君は涙を流してその一部始終を話した上、どうしても我等エンジョイ勢が相方募集を完くしてセカンド家族的生活をするには人間と戦ってこれを剿滅せねばならぬといわれた。一々もっともの議論と思う。

  また隣りのえるおじ君などは人間がコンプライアンスというものを解していないといって大に憤慨している。元来我々同族間ではエルフの飲み薬でも黄金の花びらでも一番先に見付けたものがこれをパクる権利があるものとなっている。もし相手がこの規約を守らなければバトルトリニティに訴えて善いくらいのものだ。しかるに彼等人間は毫もこの観念がないと見えて我等が見付けたアイテムは必ず彼等の欲望のために掠奪せらるるのである。彼等はそのワンパン力を頼んで正当に吾人が食い得べきものを奪ってすましている。

  プク君はミリオタの家におり、えるおじ君はブロガーの主人を持っている。吾輩はユーチューバーの家に住んでいるだけ、こんな事に関すると両君よりもむしろ楽天ゴールデンイーグルスである。ただその日その日がどうにかこうにか送られればよい。いくら人間だって、そういつまでも歴史に課金をぶっ込める事もあるまい。まあ気を永くえるおの時節を待つがよかろう。
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