んじゃ最終話。
もともと人を見下していた俺に友達といえる人はいなかった。
職を失って、彼女を失って、周りから全て無くなった時、初めて自分の愚かさに気づいた。
都合の悪いことから逃げ続けることで保たれていたクソ野郎のプライドは、逃げ場を無くすことであっけなく崩壊する。
人間ね、本当のどん底を見ると自分と対話できるようになるのよ。
「見栄とプライドを剥がして会社っていう後ろ盾が無ければこんなもんだ」
「偉そうなこと言ってたけど、じゃあ何ができるんだ?」
きちんと現実を直視した時、ようやく俺の中で自身を認めることができた。
俺は何もできない。
けど何もできないからって努力しなければ一生このまま。
失敗だらけかもしれないけど、小さな一歩でもいいから少しずつ積み重ねて前に進もう。
この時24歳。
就職氷河期のこの時代に25歳を超えての就活は相当不利と言われていた。
けれど後悔はしたくないから最後におもっくそ遊んでやろうと思ってコンビニでバイトしながらひたすら何も考えないで好き勝手遊んだ。
コンビニバイトを選んだ理由は、学生だった時に12万稼いだ記憶から今の自由な身なら生活に困らない程度に稼げると思ったから。
ナンパもしたし、風俗にも通ったし、映画の試写会とか気まぐれな一人旅とかもした。
酒タバコギャンブル違法薬物以外はだいたいやった。
俺は一年間を遊び倒すつもりで考えていた。
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遊び初めて半年、ちょうど秋にさしかかった頃。
俺はコンビニのバイトでありながらけっこう真面目にやっていた。
常連さんのタバコの銘柄覚えたり、お気に入りの雑誌取り置きしておいたり。
元気のいい接客のおかげなのか、お客さんと仲良くなることで「うちに来ないか?」とスカウトされることもあった。
遊び倒すつもりだった俺は4社踏み倒す。
そもそも就活もキッチリやるつもりだったからスカウトっていう形で就職しようとは微塵も考えていなかった。
けれど訪れた5社目のスカウト。
これが相当に特殊な仕事で、不覚にも俺は興味を持ってしまった。
バイトが終わってから、何かあったらと渡された名刺に電話をかけて「やってみたいです」と言うとすぐに面接の日程が告げられた。
この時に選んだ仕事が今の俺の仕事である。
面接はごく簡単なものだった。
いわゆる職人の世界、親方がいて弟子がいて、少ない給料で修行期間があって技術と知識と様々なノウハウを学ぶ。
昔ながらのテヤンデェ!いうノリだから当然、理不尽なことも多い世界。
けれど自分を変えるためにはこれくらいの理不尽さは必要だと、そうやって受け入れてひたすら頑張った。
そして迎える27歳の夏。
俺は仕事で出会った一人の年上の女性に初見で落とされる。
見た瞬間、全てが一致した。
「好み」ってものを形にするとこうなるんだろうなっていう、なんていうかパズルのピースがピタッとハマるイメージ。
人生で初めて異性に見とれた。
ちなみに桐谷美玲にちょっと似てる。
雰囲気は吉瀬美智子かな?おっぱいは大きい。
超絶可愛い。そう思った。
その日のうちに連絡先を交換、それからはお互い忙しい身ではあったけど時間を作ってデートしたり、会えなくてもメールや電話で繋がっていて、人生で一番の幸せを感じていた。
彼女の母性に癒されたから今まで頑張って来れたんだと思う。
「いつも頑張ってるね」って、俺より大変な仕事してるのに彼女はいつも笑顔で俺を包んでくれた。
彼女の応援のおかげで俺は仕事でたくさんの実績、結果を残し、それに伴って技術も知識も得ていった。
死ぬほど努力したと今なら胸を張って言える。
そして周りもそれを認めてくれる。
本当のプライドっていうのは無理やり自分を高く評価することではない。
今までの努力、残してきた実績、周りからの信頼、それらを安売りしないことが本当のプライドってものだと、この歳で気付いた。
彼女が心の支えになってくれたおかげで俺はここまで来れたわけだから、本当に感謝してもしきれない。
でも、正確には彼女とは付き合ってるわけじゃないっていうか、どうなんだろう?
実は、付き合ってくださいっていう一言をどちらも口にしていない。
けれど体の関係も持ってるし、中で出してるし、嫌なら嫌って言うだろうから多分嫌じゃない。
と俺が勝手に解釈してる。
そのまま紆余曲折を経て、彼女とは今でも仲良しだ。
ちょっと一回だけ、もう会わない!ってなったんだけどね。
半年くらいしてからノコノコと彼女に会いに行ってダイナミック土下座して「もう一回仲良くしたいです」と謝りました。はい。
今は迫り来る彼女の誕生日のプレゼントに頭を悩ませる日々である。
長くなったけど一夏の恋、リアルでも継続中です。
いつ見ても可愛いです。マジで。