予想はしていたが、お母さんが泊まっていくことになった。
はじめはシュピに遠慮して帰ろうとしたが、外は薄暗く危険なのでそのまま返すわけにもいかず、私が引きとめた。
1~2日程度なら、まぁ問題無いだろう。
それにやっぱり、家族が恋しい。昨日までは何とも感じなかったが、実際に会ってみると違ってくるものだ。
折角の機会。親子水入らずで過ごしたいと思う。
「ただ厄介になるだけじゃ申し訳ないから、手伝わせてもらうわね。」
そう言うとお母さんはシュピと一緒に、狭いキッチンに立った。
2人の調理の様子はというと、シュピはのんびりだが無駄のない正確な動き。一方でお母さんはやや雑さが見られるものの、非常にてきぱきとしている。
一見、相反する2人だが、シュピが調理の主体となり、お母さんが調理具を準備・具材を加工したりすることで、見事に役割分担を行えていた。
息ぴったり と言ったところだろうか。
出来上がったのはバランスパスタ。2人のチームワークにふさわしい名前の料理だ。
早速、皆で頂くことにした。
「…あなた、凄いのね。」
お母さんがパスタを一口食べ、驚きの表情でシュピを見つめる。
「こんな味、なかなか出せるものじゃないわ。調理してる時も要領良かったし…。どこかで修行でもしてたのかしら?」
「ううんー、してないよー。」
シュピは首を振る。
「んー、でもなんか味がすごいうすい気がするー。」
「えっ、これで?」
夢中で食べていた私は、思わず聞き返した。濃い味好きの私でも、十分だと感じるのに。
「シーさんは料理に熱心なのね。」
「うんー、だってジュセの笑顔、たくさん見たいからねー!いつもは、ふーんって顔してるけど、笑ったらほんとかわいいんだよねー。」
「か、可愛いって…。」
言われて、表情を一度引き締める。
「分かるわ。この子、昔から根暗で友達居なくって。笑った所、私もあまり見たことなかったの。だからたまに笑顔を見れると、嬉しかったものよ。」
「…もう。古傷に触れないでよ。」
効いてないふりをして、再び黙々とパスタを食べる私。
「ジュセちゃーん。寂しかったらママが悩み聞いてあげまちゅからねー。」
「うっさい。」
うざ顔を近づけてからかってくるシュピを、こつんと叩く。
「ふふ、シーさん。この子のどこに惹かれたかは分からないけど…。これからも仲良くしてあげてね。」
「うんー!」
私達は、夜遅くまで語り明かした。