賢者は不思議な人だった。
あたしが"生き返し"を受けた者であると、一発で見抜いた。
そもそも"生き返し"という概念は、この時に初めて聞かされたものだった。
そして賢者はアイツを知っていた。
あたしと同じように、この世界で別の種族として生きているという事も聞かされた。
アイツとは、あたしの幼馴染の事だ。
どんくさくて何処か抜けてるやつだったけど、強くて優しかった。
恋人とか、そういうのじゃ全然無かった。
でもアイツの妹がべったりくっついてたりするとなぜかムカムカして、よく喧嘩したりもしたっけ。
少なくとも友達以上であったとは思う。
賢者は訳あって、村を襲った魔物の軍団を率いていた"冥王"を倒す、素質のある者を探していた。
ただ強いだけでなく、生き返しを受けた等、様々な好条件の重なった者。
それがアイツ、そしてあたしだった。
アイツは迷い無く、その役割を受け入れたらしかった。
復讐。
あたしは今まで自分の事で精一杯で、そんな事、考えられなかった。
でもアイツが生きていると分かって、暗闇の中に、一筋の光がさした気がした。
探したい。会いたい。
会って、思い切り泣きたい。喜びたい。
そして、いつの日か必ず一緒に"冥王"を倒して、みんなのカタキをとりたい。
そして……。
あたしは賢者に意志を伝え、別れた。
その後、あたしは夢を見た。
あたしはその時、元の人間の姿に戻っていて、目の前には今のプクリポの姿の自分が居た。
あたしはプクリポに謝った。身体を借りて、自分の目的のために生きる事を。
でもプクリポは怒らなかった。笑いながら、頑張ってね と言ってくれた。
ただ、一つだけ約束することになった。
それは、あの時読んだ日記帳をプクリポのママの所に届けるという事。
目が覚めるとあたしは早速、プクリポに言われたとおりに、ハネツキというエルフに手紙を送った。
本当にこれだけでいいのかは分からなかったけど、プクリポが言うには、後は彼女がうまくやってくれるとの事だった。
まだ、アイツとは会えていない。
賢者が言うには、使命を共にする者同士は必ず巡り会えるそうだけど、その日が本当に待ち遠しい。
でも、もう寂しくはない。
これまでと違って希望があるから、まだまだ頑張れる。
死んだプクリポの分まで、私は生きなければならない。
そして…。
いつか必ず"冥王"を倒し、村を再興して見せる。
あたしはジュセ。
最後のエテーネであり、最初のエテーネだ。
-END-