フィンクの冒険日誌

こちらは、後編なので、
前編を、まだ読んでいないという人は、
そちらから読んで欲しい。


なお、この日誌の内容には、

Ｖ６．１、ストーリーの、



重大なネタバレが、含まれている。











これは、この現実世界で、
実際に起こった出来事である。



かつて、この世界には、
人々の平等を夢見た独裁者がいた。


その独裁者は、
貧富の格差が生まれるのは、

頭の良い人間が、
社会を発展させるからだと考えた。


そう考えた独裁者は、
知識人や文化人達を虐殺していき、


社会を、原初の姿へと退行させようとした。


当然の帰結として、
その独裁者の試みは、
上手くいくはずもなかったが、


しかし、
その大事件が、国民達にもたらしたものは、
計り知れない程の、大きな悲劇だった。




また、
別の時の、別の場所で、

密林の奥地から、
「お金」という概念を持たない村が発見された。


お金には、
価値と価値とを交換しやすくする役割があるが、

同時に、
価値を価値のままに保存するという役割もある。


例えば、食べ物は、
時間の経過と共に腐敗してしまうが、
お金に交換しておけば、それもなくなる。


つまり、人類は、
お金の発明によって、ようやく、
富を蓄える事が出来るようになったのだ。


だが！


お金という概念を持たない村では、
食べ物は腐る前に、皆に分け与えるしかない。


お互いがお互いに、
自分達の取ったものを、皆に分け与えるのだ。


それは！


あの独裁者が！

人々を虐殺してまで、

夢にまで見た平等な社会だった！



しかし！



その村には、僕達の世界にある、
とても大切な言葉がなかったのだ。



それは！

「ありがとう」という、感謝を表す言葉だった！



取った獲物は、分け与えられる、
それが、その村での当たり前である。


人は、当たり前の事に対して、
「ありがとう」という、感謝を伝える言葉を、
わざわざ口にしたりはしないのだ。


僕達が、「ありがとう」という、
感謝を伝える言葉を口に出来るのは、


それが、決して当たり前ではない、
相手の善意や厚意から来る行動だと、


意識的にせよ、無意識的にせよ、
理解しているからなのだ。



また、平等な村は、
努力の報われない社会でもあった。


どんなに努力をしたとしても、
横並びの平等からは、抜け出せず、

その一方で、
苦労もせずに、甘えを許す、
そんな公平性に欠けた社会だったのだ！



人類の祖が、
そんな社会を良しと思わなかったのは、
決して想像に難くない。

僕達は！

この世界が、

厳しくて、残酷だから、


他者の善意や厚意の行動に対して、
「ありがとう」という、
感謝を伝える言葉を口に出来るのだ！



そして！

原初の社会に退行するという事は！


「ありがとう」という、

感謝を伝える言葉が、失われる事なのだ！！




憤怒の炎に燃えるカブに、

今という時代を懸命に生きるチリは、叫んだ！



たとえ！


どんなに歪でも！　どんなに醜くても！


誰にも、私達の歴史を否定はさせない！！



現在は、

夢見る未来の、

まだ、その途上でしかない！



チリの言葉は、

そのまま、

今を生きる、僕達の言葉でもある。



だから、今日も、

僕達は、この世界で、

「ありがとう」と感謝を伝え、

楽しさと喜びを分かち合い、

今、この時を、誰かと共に、生きていくのだ！