ザラターンの冒険日誌

空は青く、風は薫り、
カムシカは草を食む。
ここはエルトナ大陸はアズランの町。


『　空気がおいしいねー♪　


足取りも軽やかに
エスタータが伸びをした。　


『　空気もだが
　　アズランは魚も美味いぞ！
　　特に、風鳴き岬沖で釣れる
　　サバが絶品で…

『　おーいいね！
　　じゃ、まずは腹ごしらえと
　　しゃれこみますかー！


したり顔で腕を組む　おれに、
早速食い付いてくるエスタータ。


『　おい…そんな暇あるのかよ…


ツキモリは一人、
嘆息を漏らすのだった。


さて、天星郷を
目指す事となった我々が、なぜこんな所を
歩いているのかというと…


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


時はレンドアに立ち寄った翌日まで遡る。


『　行くか、フォーリオン！
　　って、簡単に言うけどさ…

『　当然、行くアテはあるんだろうな?


懐疑の目がおれに刺さる。


『　見くびってもらっちゃ困る。
　　おれも気になってたから、
　　実は前から情報は集めてたんだ。　
　　まあ聞いてくれ。


最初の情報は…
どこかの博士が強者と組んで、
空飛ぶマシンで直接、天星郷に向かったが…
あえなく撃墜されてしまった、という話。


『　つまり…仮に天星郷に
　　行く手段があったとしても、
　　あそこの住民…天使達は
　　おれ達地上の民を歓迎しては
　　くれないと言うことだな。

『　ダメじゃん！

『　フォーリオン編、完…

『　聞けって。


方々で得た情報と、
おれが天使のおっさんとの会話で
知り得た情報を照らし合わせると…

どうやら天使達は
閉鎖的ではあるものの、地上の民を
敵視しているというワケでもないようだ。
ならば…


『　穏便に天星郷に行きたいなら、
　　天使を探し出して
　　直接頼み込むしか無いって事。

『　ふん、雲を掴むような話だ。

『　探して見つかるもんなのかな、
　　天使って…

『　アテがないワケでもないんだ。


…天使たちは、地上に降りて来て
何かをしている。それは確かだ。
おっさんもそうだった。


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


彼は
『　英雄達を招く試練場に
　放つための魔物を捕らえに来た　』
的な事を言っていた。　　


そして…


『　″彼女″の料理を食いたければ
　せめて歴史に名を残すような
　【英雄】に成って見せるが良い！　』


とも。


『　天使達は、
　英雄を探している可能性が高い。
　それも…歴史に名を残すような大英雄を。

　君らが大英雄って聞いて、真っ先に
　思い浮かぶのは、誰だ?


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


『　勇者の盟友。

『　大魔王。


ウェディと魔族が、同時に答えた。

口は揃わなかったが、この二つの名が
同一人物の物であるという事を、
魔界に降りた者達なら知っている。

ややこしいので、仮に
【　エックスさん　】
とでも呼ぶ事にしよう。


『　そう。
　そして、そのエックスさんが…
　最近【　ユーライザ　】という
　不思議な女性と行動を共にしている
　という話なんだ。


『　そいつが天使だとでも?

『　ああ、翼こそ無いらしいが…
　　可能性は高いと思ってる。


___なんか、
　　浮世離れしてるって言うか…___

__一言でいうなら…天使っぽい?__

__ユーちゃんマジ天使ww__

__エックスさんの従者…というか
　信者だね、あれはもはや。__


…ユーライザを直接見た者達の証言も、
それを物語っている気がする。
天使のおっさんが喋った事と
共通する内容の情報もある。


『　つまり、だ。
　　エックスさんの足取りを追えば…


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


そして時は戻って。

最近エックスさんが訪れたのが
このアズランだったというワケだ。


『　ふぃ～
　　ごちそうさまっ♪　


早速の寄り道、いや、情報収集がてら
定食屋で小一時間。


『　こんな調子で追い付けるのかよ…

『　ツキモリだって
　目、輝かせて食べてたじゃん。
　『サバの味噌煮』。
　ぎんしゃりと…『サバの味噌煮』。　
　
『　だ、黙れ…
　　二回も言うな…ッ！

『　はは…青い海で獲れる魚も
　　大したもんだろ。
　　情報も得られたしな！


ここ最近この大陸を襲った
【　マガツカゼ　】と呼ばれる災厄。
それを鎮めたのが、
件のエックスさんだという話だ。
毎度ながら英雄と呼ぶに
相応しい活躍である。


『　詳しい話を聞きたきゃ
　領主館に、だったな。
　よし行こうか。


急かば回れ。
空を目指す冒険は、かくして
ゆっくりと幕を開けることになった。


～～つづく～～