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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 130

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ザラターンの冒険日誌

2023-04-01 11:06:39.0 2023-04-02 01:40:59.0テーマ:その他

空を目指して(19)(ver6.1までのネタバレ注意)

『 じょーだん!冗談だって!
  つい職業病が……くっ


…野郎どもの、敵味方の垣根を越えた
見事なハーモニーに驚いたか、
エスタータは不自然な笑顔で場を
取り繕おうとするが…


( おい、『くっ』て言ったぞ。
( 言ったな。
( 今、『くっ』、て。


野郎どもは案外、めざとかった。


『 と、とにかくっ!!


吟遊詩人は赤面して天井を見上げ、
大きな声をあげる。
そしてしばらくして正面を向き直すと、
一転して、真面目な顔つきになった。


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 リナーシェの事。
  調べ歩いて思ったんだ。

  心域は…この空間は…

  英雄の、誰にも見せたく無かった、
  心の弱い部分と…

  でも、本当は、そんな弱さを
  『誰か』に気付いて欲しかったんだ、
  ていう魂の叫び…

  そんな相反するキモチが創り上げてしまった
  悲しい世界だったのかな、て。
  だから…


…エスタータは、静かに拳を握り締める。


『 あんた達、荒くれが…
  ううん、あたし達冒険者、全員が!
  きっと、土足で入り込んで、
  バカ騒ぎしていい場所じゃぁ…
  無かったんだよ…!


場が、しん、と静まり返った。


なるほど。故に彼女は怒り、
それを場の全員に手っ取り早く理解させる為に
謳ったと言うワケか。


確かに…少し考えれば分かる事だ。


悪神ならともかく、正気の英雄が…
己の、魂の慟哭が生み出した、この歪な空間に。
誰かを招きたいとは決して思うまい。


…おれも『荒くれ』と一括りにされてるのは
不本意ではあるが…
あの粉砕された柱とかを見たらまあ、
ぐうの音も出せんか。


周りを見ると海賊達もバツが悪そうにしていた。
サマーウルフなど、主人に怒られた飼い犬の様に
切なく鼻を鳴らしている。


戦う力を持たない一人の少女がこの場を征するとは。本当に…大した子だ。


隣のゲンも、苦笑いしながら
くっくと喉を鳴らす。


『 分かったよ、嬢ちゃん。
  俺等の負けだ!
  
  ここから出て行くし、
  金輪際、近寄らねェと約束する。
  …それで勘弁してくれや。


ゲンの潔い提案。
エスタータとツキモリが、
すかさずこちらに懐疑の目を向けた。


『 信用して良いと思う。
  善人じゃあないが…
  大の男が、ここで約束は破らんさ。
  だろ?

『 おおー、心の友よ、俺の事
  分かってきてるねェ!


こちらの意見を、
ゲンはすかさず茶化してくる。
うるせえし。命のやり取りしかしてねえし。


『 おけ。じゃあいいよ!
  ここに置いてけないし…
  町までしょっぴいてくのメンドイしね。

『 結局、面倒いんじゃねえか…


エスタータは、奴らの解放をあっさり認めた。
ツキモリも、特に異論はなさそうだ。


『 ありがてェ、よっしゃ!


ゲンは礼を言うと、真空呪文を器用に使って、
瞬く間に自分と子分達の拘束を解いた。

まったく…こちらの判断がどうあれ
逃げ出す算段はあった訳だ。
律儀に許しを乞うたのは、奴なりの
敬意だったのだろうか。


☆   ☆   ☆ ☆    ☆   ☆


『 じゃあ俺等は ずらかるが…
  礼に一つ教えてやるよ。
  
  始原の歌姫の物語は…
  彼女の死、そこで終わらねェ。


ゲンはおもむろに語り出す。
おれ達は顔を見合わせた。


『 例えば…ヴェリナードの初代の王は
  ヴィゴレーじゃねェ。

『 ええっ!?

『 リナーシェ殺しの犯人に
  仕立て上げられたヴィゴレーの弟、
  王弟カルーモを、
  歌姫の妹アリアが助けて、真相を究明。
  結果ヴィゴレーは処断され、
  その二人が王位に就いたのさ。

  アリアを甘く見ていたか、あるいは…
  ま、ヤボな話か。


…それを知っていれば、歌姫も化けて出る事は
無かったかもな、と、ゲンは鼻を鳴らす。


『 随分と詳しいな?

『 まあな。何せ俺はヴィゴレー本人と、
  奴と親しい奴らにも会った事があるからな。
  もっとも…


☆   ☆  ☆ ☆   ☆   ☆


…亡霊だがな、と、ゲンは続けた。


『 ヴィゴレーは、海賊の俺から見ても
  救えねェ悪党さ。

  …でもな。

  亡霊になってからも…600年。
  今でも後生大事に持ってたぜ。
  
  テメェで殺した女に…
  贈った『指輪』をな。


『 ええーっ!なんで!?


エスタータの驚きの声に、
『嬢ちゃんにオトナの恋歌はまだ早いか』と
ゲンは笑う。


『 俺はこの物語を完成させる為に
  ここを訪れたのさ。
  嬢ちゃんのお陰で、手間が省けたぜ。
  ありがとよ。


~つづく~
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