「塔のような高い建物は薙ぎ払われて崩れ落ち、人々の悲鳴がこだまします。
薄れゆく意識の中、少女がみたものはすべてが燃え尽きる紅蓮の炎でした。
「街が、大切なみんながゆらいで見えます。
もしかしたら、この光景さえも幻なのかもしれません。
ですが今となっては確かめるすべもありません。
「その日、世界は天使たちの無慈悲な裁きを受けたのでした。
「…少女には過去の記憶がありません。
パパやママの顔も思い浮かびません。
思い出そうとがんばったこともありますが、まるで暗闇をのぞき込むような恐ろしい気持ちになって、胸がズキズキ痛むだけでした。
そんな彼女にふたりの紳士はたくさんのお友だちを与えてくれました。
思い出を振り返らず、楽しいこどだけを見ていられるように。
ロッポンギはふたりの紳士の力でいち早く復興をとげ、噂を聞いて訪れる旅人の多くは街にとどまり少女のともだちになりました。
最初は少女のために始まった街の再建でしたが、気が付くと多くの人々が笑顔で暮らす地上の楽園になっていました。
『…なーんなの、このお話?
「よくあるおとぎ話じゃないか。
『これでオシマイなの?
「いやいや、お話には華が必要なんだよ。悪役と言う華が。魔女の登場しない白雪姫を想像してごらん!
さあ、明日は物語のクライマックスだ。
楽しみにしておいてくれたまえ。
…あぁそうだ、しぐさ≪空気イス≫での名演技ごくろうさま!