「少女が泣き崩れて言いました。
”やめてよ、おにいちゃんたち…
どうして?
どうしてこんなヒドイことをするの?
おじさんたちが何をしたって言うの?
わたしはただ、お友だちが… お友だちが欲しいだけなのに…!
『え?
初手から何この展開…
幸せな話はどこいったの?
「前回お話したでしょう。
悪役が現れたんです。今回はクライマックスですよ?
お話の山場にはつらい困難がつきものなんです。
感慨深げに一呼吸おいて、男は話を続けました。
「神の手引きでICBMが落ち、トウキョウは壊滅しました。荒廃した地上に現れたのは伝説の天使や悪魔たちでした。
生き残った人々も伝説の存在を目の当たりにして奇跡を乞い、いずれかの陣営について争うようになりました。
そんな中、悪魔のふたりが偶然美しい魂を見つけました。
”おお、なんと美しい。
”このままにしておくには惜しい。
”無慈悲な天使どもめ、すべてを巻き込んで滅ぼすなどとんでもない連中だ。
なんと哀れなことだろう。このような美しい魂が泣き崩れているなど見るに堪えぬ。
ふたりはこの魂を再び蘇らせることにしました。
少女が暮らせるように、街も復興します。
寂しくないように住人も作りだしました。
こうしてロッポンギはかつての繁栄を取り戻しました。
そして少女からそっと哀しい記憶を消し去っておきました。
ふたりは美しく微笑む少女を心から愛していたのです。
すべてが順調でした。
あの来訪者が訪れるまでは。
少女はいつものように新しい旅人を歓迎しました。
そして彼らにもこの街にいてほしくなって、彼女は勇気を出してお願いをするのでした。
『あのねー 死んでくれるー?
わーい!
うれしいなー!
お兄ちゃん達
ずっといてくれるんだー!
ねぇー
早くー早く死んでよ
ねぇねぇ早く死んでよ
早くー
ねぇ
死んでくれないのー?
私の言う事
聞いてくれないんだー!
お兄ちゃん達がね
私が死んでねって
言ったのにね
死んでくれないの
お兄ちゃんと
ずっといたいのにね
だから
お願いしたのにー!
『ちょっと、なによそれ?
死ねってどういうことよ!
「そうだね、もっともな意見だ。でもちょっと考えてみてほしい。少女からみた≪死≫はどんな意味を持つのかを。どんな思いを込めてこのお願いを言っているのかを。
「すべてを失ったつらい記憶を消されたにもかかわらず、少女は孤独を恐れていました。
ふたりの悪魔は少女が孤独を感じないようにより多くの友だちを与えることにしました。ロッポンギを訪れた旅人を殺し、ゾンビに変えて友だちに加えたのです。すべては愛する少女の笑顔のために。
そして今日も、新しいお友だちが増えるはずでした。
そう、いつものように…
さあ、今日はここまでだ。
明日はいよいよ最後、顛末を語ろう。