姉さん、事件です。
私は、強い敵を求めて
歴代屈指の人気ボスモンター
『ダークドレアム』に戦いを挑むことにした。
噂じゃあ桁違いの強さからか、
なんと8人での討伐となるらしい。
そう、それがいわゆる『同盟パーティー』というやつである。
NPCにも
「ヤツはきょうてきじゃ こころしてかかれっ!」と念を押された事もあり、
その昔、ドラゴンクエスト6で初登場時に戦いを挑んだ際の、ヤツの圧倒的な火力と慢心していた心を真っ正面から完膚なきまでに叩きのめされ、無様に返討ちにあい、
気付けば教会送りにされた記憶が蘇った。
海底のキラーマジンガと、まさかの第2形態 真ムドーと並ぶ、ドラクエ6の三大トラウマのひとつである。
そんな事を思い出しながら、私はオートマッチングで他の見知らぬ7人の仲間たちとの冒険に身を投じた。
そして『悪夢の街』とよばれる世界へと旅立ったのだ。
ボスへと続く道も一緒に進んで行くのだが、8人での共闘感に心踊りつつも迫り来る魔物を千切っては投げ、千切っては投げ。
制限時間にも迫られながら、どんどん蹴散らし奥へ奥へと進んでいった。
ボスのみならず、道中は普通でいうボスクラスの魔物がわんさか襲ってくるのである。
故に8人で力を合わせなければ、すぐに全滅は免れないだろう。
他の仲間達の戦い方をみるに、どうやら私以外の7人は何度も挑んでいるようで(リプレイ報酬がいいらしい)
ほぼ作業のように進んでいく。
道順や倒す敵の順番を予め知っているような動きだった。
仲間としてはなんて心強いだろう。
そして迎えた大将戦。
ダンジョンの最上階にやつは現れた。
不敵に笑う最強のボスモンター
『ダークドレアム』の登場である。
私は初めての挑戦を楽しもうと、
「緊張感あるぜ!」なんて軽口を仲間に喋りかけたが、反応はないようだ。
きっと皆んなも武者震いとアドレナリンで、チャットどころではないのだろう。
だが、そこである事件は起こった。
システム上の仕様なんだろうが、
辺りに漂う魔王の邪悪な空気とは別の、
ざらついた不穏なプレッシャーを、私は確かに感じ取っていた...。
続々と準備完了していく仲間達、ダークドレアムの登場シーンや物語展開シーンのムービーを見ていると仲間達がしきりに「遅い」などと発言をしだしたのだ。
そう、私以外は何度もプレイいているプレイヤーなので、当然ムービーはスキップしてとっとと準備完了している。
そんな最中私だけは初めての挑戦の為、戦いに挑むまでのムービーを飛ばせずにいたのだ。
ましてやあの人気ボスのダークドレアムなのだから、その登場シーンの映像が豪華かつ盛大で長くなるという事は想像に難しくない。
7人もの仲間を待たせてしまい、申し訳ないと思うのとは裏腹に、クライマックスへ向けて盛り上がるダークドレアムとの掛け合い。
....まだまだ映像は続くようである。
くっそ!
この時恐らく、他のプレイヤーはボス直前の戦隊ヒーローばりに横一列に並んだ状態でいたはず。
そう...この私を除いて。
誰が遅いのかは一目瞭然である。
私の周りにはグットマンと呼ぶべき仲間達が多いから、久しく忘れていたよ、オンラインの怖さを!!
心無い仲間からの言葉を私は悲しく思った。
無事に討伐が終わり再び映像が流れるのだが、それが終わった後には当然もう7人の姿は無かった。
部屋の真ん中置かれた宝箱が、儚げにそこにあるだけであった...。
私は、この冒険を経てアストルティアの闇を、垣間見たような気分である。
ストーリーの進行度は人それぞれであり、ペースは常に初めてのプレイヤーに合わせるのがいいと思うんだが、どうやらせっかちな奴が居るのも事実らしい。
私はより一層、仲間を大切にしようと思う。
だからみんな.....。
同盟パーティーには....気を付けなはれやッ!
手伝うから一緒に行こう!
腹いせに、カジノへGO!
こんな日にゃあ 散財だぜ散財!!
雲のように自由でありたいぜ。
ひゃっはーー!