2014-05-04 08:05:25.0 2014-12-31 23:19:02.0テーマ:その他
ゆうはん。(仮)9 「ねぇねぇ、お空って誰の物なの?」 「鳥さんのものだよ」 「じゃぁ、海は?」 「お魚さんのものだよ」 「ふぅん。じゃぁさ、この世界って、誰のものなの?」 「それはね……」
9
まおうの さけびが こだまする!
「――中学生かってのッ!」
「え、なに、魔王。ちょっと何言ってるか意味わかんないんだけど、怖ぁッ」
「いや、すまん勇者よ。余にも、まったくよくわからん」
「あ、そうだ、ちょっとよく見せてみ?」
「は? え、近いッ、いやいや近いって、貴様なにをッ?」
ゆうしゃは まおうを ガン見した!
……えっ、ちょ、ヤダ、なに勇者のヤツ、なんで余の髪とか掻き上げてるのッ! だ、誰にも触られたこと無いのに……、ああ! そこ、やめッ! つ、角は敏感なのに……っ!
――ややあって。
「うん! イケる!」
「なにィッ!?」
「まちがいない。魔王――、お前はイケメンだ!」
「はぁぁあッ?」
「あの姫さん、ぼくにまぢ惚れなんだけど、それはたぶん単に命の恩人としての延長だ。好きを勘違いしているのさ。あの年頃だからね。それに結構メンクイでさ」
「はぁ……」そうですか、としか言いようがない魔王だった。
「そこで魔王。お前をぼくの親友として紹介しようじゃないか」
「ええーッ!」
まおうは ビックリだ!
「ちょ、まっ、待て、待つのだ勇者よ! だが、しかし余は魔族だ。貴様らは人間だ。それは許されることではない」
「それがどうした?」
「ええええーッ!」
まおうは ふたたび ビックリだ!!
「さっき魔王が自分で言ってただろ、そんなことはどうでもいいって」
「いや、あれはその、なんというか、こう……、勢いで言ってしまっただけであって――」
「ばかッ!」
――ぱんッと、乾いた音が響いた!
「な……ッ」
勇者の平手打ちが魔王の頬に放たれたのだった。
まおうは おもった!
……え、え、なんで? なんで余は今、殴られたッ? え、なに、なんなのコレ……ッ?
「最初から失敗を恐れてどうする!」
「ええー……ッ」
「フラれるかもしれないってッ? ばかやろう! そんなの自分が傷つくのが恐いだけなんだろうッ?」
「あ、いやあの、あのね、勇者よ、ちょっと落ち着かんか……?」
「いいか! 高鳴る胸の内が恐怖だったとしても、全身を奮い立たせるのは、いつだって勇気なんだ!」
「貴様、単にそれが言いたかっただけなんじゃ……?」しかも、ついさっき思いついたようなフレーズ使い回しているだけなのでは……?
「たとえ! もしもフラれたってなぁ、そこであきらめんなよ! そんときゃ自分を磨いて出直せばいい! それだけのことだろっ!」
「あのー……、ゆ、勇者よ……余の声、聞こえてる……?」
「もう止めるんだ。こんな、こんな争い、悲しいだけだッ!」
バンっと、床に拳を殴りつけた勇者。指に血が滲んでも固く握られたままのそれを見て、魔王は感じていた。
「あ、わかった。貴様、ひとりで勝手に熱くなって周りをドン引きさせるタイプだろ」
――だがしかし、魔王も同類だということに本人も気づいていない!
「ぼくらが争ったって、誰の何の得にもなりゃしない。人間だろうと魔族だろうと関係ないんだ。そんなことよりも、自分の気持ちにもっと素直になって――」
ゆうしゃの こうげき!
「惚れたコの為に生きてみろよッ!」
ゆうしゃの さけびが こだまするッ!
まおうに せいしんてき 大大大ダメージ!
「ああああ……ッ! ぐふ……ッ!」
まおうは たおされた!
――そして、
ゆうしゃは いった。
「だいじょうぶさ、魔王。ぼくらで証明してみせよう。ぼくと世界を、はんぶんこ、だ」
「余が貴様と、世界を、はんぶんこ、だと……?」
「ああ。そうだよ、魔王。先にお前が言ってくれたんじゃないか、ぼくらで世界をはんぶんこしようって」
まおうは おもった!
……余と組めば世界の半分をやろう、余は、確かにそう言った。それは魔族の支配、余の片腕となる気はないか? と、そういう意味であったのだが……、
「うん。あのね、魔物さんが暴れなくても暮らせる為、ヒトと魔族が住める世界の為に、そうだな~ぁ、まずは一緒にお城へ行こっか」
……コイツは、この勇者は……、その先の未来を見ていたのか。魔族の王である余と、人類の勇者が、世界を半分ずつにするということは、文字通りでなく、人と魔族の共存だ。
ああ!
それは進化だ。共に新しい世界を築こうというのか!
「さぁ、行こう。……あ、もっかい迷宮を戻るのはもうイヤだよ? 松明も無いしMPもあまり無いからね、魔王の呪文で帰ろうよ」
まおうは おもっていた。
……コイツは、まぎれもなく、勇者だ。ゆうきあるもの、なのだな……。
差し出された手を、しっかりと握りしめ、立ち上がった……。
第一章 完。
※この物語はフィクションです。