「知るわけないじゃないか。さっきそこで見つけて声をかけたんだよ」
返ってきた言葉に絶句する。
「怖すぎんだろ!!』
「何がだい?』
私は後ろを振り返り、ずっと立っていたウェディ娘に【おじぎ】をした。間に割って入った分距離が近いのと私のとんがり帽子がそのままアバターを貫通する光景になってしまっているが、これはよくあること
「私のフレンドがすみません!どうぞ気にせず行ってください!」
ウェディ娘はそのまま去っていった。私にはその後ろ姿が怖いものから逃げて行く小動物のように見えた。
「あー、せっかく立ち止まって話聞いてくれそうだったのに」
「ちょっとこっちきなさい!」
ーーー
エル男を人気のない場所まで連れてきた。
「いっつもあんなことしてるのか!?」
「うん、僕はフレンドが欲しい。一緒にストーリーしてくれる人が欲しい。
「いやいや明らかにオフ会しようって言ってたよな!?リアルで会ってドラクエ10するとかいう遠回り決め込もうとしてんじゃないよな!?」
「そんなことないよ。あれはたまたま」
絶対嘘だ!こいつから嘘の味がするぜ!
「じゃあいつも通りに話しかけてきてくれよ」
そう提案すると彼は飛び出していった。そして人に話しかける。話しかける。話しかける。大抵はスルーされていた。別にさっきみたいにオフ会などとは言ってはない。
「ストーリー一緒にしませんか」
シンプル、なのだが。何だろうこの違和感。・・・あ、と私は気づく。もうかれこれ10人以上は話しかけてるが、全員女性アバターなのだ。男アバターを明らかにスルーしている。
「僕とvcしましょう!オフ会させてください!」
そう聞こえた瞬間、私はまた走り出した
「すみませえええええええええn」
ーーー
ガタラ展望台
エル男を連れて、展望台まで来た。ここはあまり人がいないし、エル男も下手にストーリー一緒にしませんかという名のナンパをしにくい場所だろう。そして景色もいいしな。
「エル男くんさぁ、ドラクエ10楽しい?」
彼と出会ってもう半月ぐらいか。ゲームはやはり楽しいんでやるものだ。だから、彼が楽しんでるか気になった
「全然楽しくない」
予想通りの答えが返ってきた。
「何でこんなゲームを楽しいんと思うんだろう、僕にはわからない」
ゲームすらしない彼にとっては、理解できないこと。本当に楽しさがわからないんだ
「エルはさ、奥さんがなんでこのゲームを選んだのか、彼女がやってたゲームを知りたいって言ってたけど。本当は」
私も文字制限がくる。確かにエル男の言った通り、自分の言葉が途中で止まってしまうというのは慣れてない人にはやりずらいことなんだろう
「このゲームで新しい人を見つけに来たんじゃないのか?」
彼の返信が数分遅れる。何だかいつもより長く感じるのはきっと気のせい
「そうだね。僕は、新しい嫁が欲しい」
一緒に展望台からガタラの町を見下ろしていたエルこちらを見つめる。なんだ何だ
「家もある」
「う、うん」
「金も1000万は貯めてある」
「お、おう?」
「何不自由させない」
・・・なんか私に言ってないかこれ
「と、とにかくだ。早く相手が見つかるといいな」
やっぱこの人怖い!!そう思いそそくさと立ちさろうとすると
「やっぱだめだよね。はあ。今日もさ。帰りの電車が来てさ。飛び降りようかなって思ったんだ。もう終わりにしたいって」
「エル・・・」