道具鍛冶を始めた頃は、真面目にギルドに日参して、ハンマーを振るっていた。
ギルドなので、自分と同じ同志「いやライバルかな」、で賑わっている。
どのキャラもプレーヤーが操作して、画面の向こうでは、星3か星2で一喜一憂している事だろう。
中には、高額商材の星3を連続で叩き出す猛者も居る。
これ程の、腕前になるには、どれ程ハンマーを振ったのだろう。
もちろん、自分もその過程に居るし、いずれは、‥‥無理かもしれない。
自信が無くなったので、今は住宅村の庭先に鍛治設備を置いて作業をしている。
というのは冗談だが、本当の理由は、素材屋の品揃えだ。
納品クエストでお題の物を作ろうとしても、鍛治ギルドの素材は、品物が限られていて、全部の素材が手に入らない。
最初の頃は、ルーラで壺ギルドやランプギルドに行って素材を集めていたのだが、ある日、自分の住宅村の素材屋を覗くと、欲しい物が全部揃っている。
意外とギルドって不便だと思った。あと、自分勝手なのだが。
調子のいい時は、意気揚々と、人の多いギルドでハンマーを振るのは楽しいが。
調子の悪い時は、こっそりと、誰にも見られたくない。
そんな訳で、最近は、住宅村の庭先でハンマーを振っている。
のんびりしたBGMが流れていて普段は誰もいない。
それでも時折「タッタッタ」と誰かの足音、しばらくするとルーラの音と共に消えて行く。
今日も住宅村で、トンテンカン。