黄昏の空が広がる平原で、一匹のスライムが追われていた。
ごろつき「待ちやがれ!このプルプルゼリー野郎!」
スライム「ハァッ・・・ハァッ・・・!」
スライム(早く・・・早くこいつから逃げなきゃ・・・!)
スライム(助けを呼ばないと皆が、お姉ちゃんが・・・!)
ズルッ!
スライム「あっ!」
不運にもそのスライムは転んでしまい、起き上がる頃には既にごろつきに追いつかれていた。
ごろつき「雑魚の癖に手間かけさせやがって・・・アニキになんて言われるやら!」
ごろつき「まあいい!こいつはさっさと殺して、死骸を持っていけば満足してくれるだろう」
逃げる場所を失ったスライムを見て、ごろつきの顔が狂気に歪む・・・
スライム(僕は・・・僕はこんな奴に殺されて終わってしまうのか!?)
スライム(お姉ちゃんや皆も助けられないまま死ぬなんて・・・)
スライム(皆・・・ごめんね、僕が弱いから皆を・・・助けられなかった・・・!)
ごろつきがオノを振り下ろそうとした瞬間、ごろつきの背後に一つの影が現れた。
スライム(あれ・・・おかしいな、死ぬ間際になって急に変な幻覚が見える・・・)
その影は突然炎を吹き出し、ごろつきに襲いかかった。
ごろつき「ぐぁぁぁ!てめぇ!何しやがる!」
???「・・・」
スライムが見たその影は、一人の騎士だった。
しかし、黒く染まった鎧に顔を覆う不気味な兜、そして何よりその体から発せられるオーラがその剣士の異様さを際立てていた。
ごろつき「仕事の邪魔をしやがって!このゼリーの前にお前を引き裂いてやるぁぁぁぁぁ!」
スライム「あ・・・危ない!」
スライムは、巨大なオノに騎士が引き裂かれる未来を想像し、目をつぶった。
しかし、目を開けたスライムの前には信じられない光景が写っていた。
あの巨大な体躯から繰り出されたオノの一撃を、この騎士は片手で受け止めたのである。
次の瞬間、騎士はごろつきの腕を跳ね除け、強力な居合切りを繰り出した。
ザシュ!
ごろつき「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
斬撃を受け、もがき苦しむごろつきに対しその騎士は問いかける。
???「言え、貴様らのボスはどこにいる。」
ごろつき「アニキの居場所だと?お前に教える訳には・・・」
ザシュ!
その騎士は躊躇いもなくごろつきを再び斬りつけ、怒気を孕んだ声を投げかける。
???「言えと言ったのが聞こえなかったのか?」
ごろつき「ひぃぃ、は・・・話すから!話すから殺さないでくれぇ!」
ごろつき「アニキは・・・!アニキはセレドの大滝で商品の品定めをしている!」
???「行け、俺の気が変わらないうちにな・・・」
ごろつき「はっ・・・はいぃぃ!うわぁぁぁぁぁ!!!」
ごろつきは、悲鳴をあげながら逃げていった。
スライム「あの・・・助けてくれてありがとうございました」
???「礼なら後でいい、ここでは他のモンスターもうろついていて危険だ、安全な場所に行くぞ。」
スライム「は・・・はい!」
謎の騎士についていったスライムは、自らが追われていた事情をその騎士に話した。
スライムたちの住んでいた村が突然ごろつきたちの集団に襲われた事、スライムの仲間たちはごろつきの集団に捕えられ、自分が隙を見て脱出してきた事・・・。
スライム「そして・・・僕のお姉ちゃんも捕らわれてるんだ」
???「そうか・・・ごろつきたちが何を考えているかはわからないが、思い通りにはさせない」
スライム「お願いです!どうか皆を、お姉ちゃんを助けてください!」
スライム「僕は弱いから・・・誰も救えなかった・・・強いあなたにしかできないんです!」
???「いいや、君は弱くなどないさ」
スライム「え?」
???「君は仲間と家族を救うために危険を冒してまで脱走し、俺に助けを求めてきた、それは普通のスライムにも、人間でも勇気無しには中々できないことさ」
スライム「そうなのかな・・・?」
???「スライムの君には難しかったかもしれないな・・・さあ、急いで君の仲間のところに行こう」
???「ところで、君の名前は?」
アルノ「アルノといいます。あなたは?」
ダークナイト「・・・ダークナイト」
To Be Continued・・・