御機嫌よう諸君、また会ったな。
植物学者のバアルゼブルだ。
今回は探検隊が調査したメギストリスを中心に生息する植物について書かせてもらう。
至らぬ部分もあるかもしれないが、大目に見てもらえるとありがたい。
(この植物考察はあくまで私が考えた仮説を元に記述しています。それでもよければ是非最後まで見ていってください。)
「アビスマリー」
???科
生息地、メギストリス領
メギストリス領に生息する青い花。
その綺麗な見た目とは裏腹に花弁や葉、茎から根まで強力な毒がある。
実験のための尊い犠牲としてその辺のサイレスを捕獲し、口の中にアビスマリーを放り込んだところ。
激しい激痛に襲われたと思われるほど苦しむ表情を見せ、
突然壁に向かって突進したり雑草を食べ始めるなどの奇行を繰り返した後絶命した。
その結果からアビスマリーの毒には幻覚作用があり、もし服用したら最後。
この世のものとは思えない幻覚を見せられ、嘔吐、発狂といった作用を発症し、最後は苦しみに悶えながら死亡することになる。
この花を見ても決して触れたり食べようとは考えてはならない。
見かけたらすみやかに焼却し、増殖の手段を絶つことを推奨する。
しかし、何度処分しても脅威的な増殖能力で増えてしまうのだ。
穏やかに見えるプクランドにこのような脅威があるとは調査に出るまで思わなかった・・・
ただ、不可解なのは。
本来植物は種を生み出して放出したり、自らの根から新たな芽を発芽させるなどして増殖するのだが、
この花には胚珠もなければ根から発芽する気配も全くない。
そして成分を解析してみたところ、本来普通の植物に宿る事のない魔素と呼ばれる成分を発見した。
もしかしたらアビスマリーは元々アストルティアの植物ではないのかもしれない・・・
何であれ早急に調査解析が必要だ。
上 「チショウタイサンボク」 タイサンボク科
下 「ヒテンタイサンボク」 タイサンボク科
どちらも同じメギストリス領に生息している。
メギストリス領の中でも変わった生態を持つ木である。
チショウタイサンボクはヒテンタイサンボクの幼体であり、ヒテンタイサンボクはその成体だ。
この木は成長の際に他とは違う成長方法をとるとされている。
これからその過程について説明しよう。
チショウタイサンボクは発芽した後成長する中無数の枝と根を作り出し、成長のために必要な養分を吸収する。
この時はどんなものでも養分として利用するために、花の色も様々な成分が混ざり合った桃色となっている。
そして必要な養分を吸収し終えた時、無数に別れた枝や根がそれぞれ融合、統合を繰り返して最終的に一本の太い幹が完成する。
同時に内部が必要とする栄養素も変化し、成体後は特定の栄養素しかとらなくなる。
それから一本の木となったチショウタイサンボクは他の木と同じように空へどんどん伸びていき、
無駄なものを取らなくなったことで、花の色も、空の色によく似た薄い水色となる。
そうして初めてヒテンタイサンボクと呼ばれるようになるのだ。
植物でありながらどこか生物的なこの木が咲かせる花は、庭具や染料の材料としてよく使われる。
アズランの王族や貴族階級の服に使われることもあるため、非常に人気が高いらしい。
いずれは私も見てみたいものだ・・・
おっと大分長く書いてしまった。
他にも紹介したい植物はあるけれど、それはまた後編で紹介させてもらおう。
(後編に続く)