第二話後編 絶望の試練
セリアの呼吸は既に荒くなっていた。
短時間で放った魔法の連続詠唱が、確実に彼女の魔力を削っている。
そこへ、低い声が落ちた。
「闇の流星」
次の瞬間――
闇の閃光が空から降り注いだ。
黒い光の豪雨。
それはまるで流星のように三人の頭上へ降り注いだ
「うわぁぁぁ!!」
三人の身体が弾き飛ばされ、岩壁へ叩きつけられる 地面を転がり、激しく打ち付けられる。
セリアはすぐに呪文を唱えた。
「ベホマラー!」
回復の光が三人を包み込む。
裂けた傷が塞がり、身体を癒す。
だが――
「……ぐッ!!」
突如、三人の身体を闇の電流が走った。
全身を焼くような激痛。筋肉が痙攣する。
指一本、まともに動かない。
砂煙がゆっくりと晴れていく。
そこに立っていたのは、何一つ乱れていない魔王の姿だった。
まるで、先ほどの攻撃など存在しなかったかのように。
「なん……だと……」
リクの声が震えた。
歯を食いしばる三人の前で、魔王は静かに告げる。
「……こんなものか」
魔王の斧が地面を向く。
「魔蝕」
その瞬間。
魔王の足元から漆黒の影が広がり、液体のように地面を這う。
じわりと三人へ迫る。
影から立ち昇る瘴気が空気を腐らせる。
三人はまだ身体を蝕む痛みに耐えていた。
動けない。逃げられない。
その時だった。
「く、ガアァァァッ!!」
バロムが咆哮した。
痛みを押し潰すように叫びながら、リクとセリアを抱える。
そして全力で地面を転がった。
直後、闇が三人のいた場所を飲み込む。
岩が腐り、瘴気が噴き上がる。
「はあ……はあ……」
バロムの荒い呼吸が響く。
魔王が見下ろす。
「まだ抗うか、無駄なことを」
「力の差は歴然だ」
リクが叫んだ。
「まだだ! 僕達は諦めない!」
拳を握り締める。
「託された想いを裏切らないために!!」
リクは振り向いた。
「セリア! バロム! 力を貸してくれ!!」
「当然です!」
「任せな!」
リクは頷く。
「みんなの力を合わせれば、超えられないものなんてないんだ!!」
その瞬間、魔王が呟いた。
「メラガイアー」
獄炎の火球が放たれる。
洞窟を焼き尽くす灼熱。
だが――
「マホカンタ!!」
透明な光の膜が展開された。
セリアが前に立ち、盾で獄炎を弾き返す。
「光壁!!」
極光の壁が広がる。
清浄な光が瘴気を浄化する。
「今よ!!」
「次は俺の番だぜ!!」
バロムが突進する。
「バイキルト!!」
筋肉が膨れ上がる。
戦鎚が唸る。
「震天轟槌――破天衝ッ!!」
轟音。魔王を叩きつける。
リクが叫ぶ。
「雷光招来――ギガデインッ!!」
雷が降り注ぐ。
「閃光戦斧」
雷が斧へ集まり、光が収束する。
踏み出す。
「くらえぇぇぇッ!!」
「閃光烈斬ッ!!」
光が弾けた。
洞窟を満たす閃光。
三人の力を込めた一撃。
だが。
「ふはははははッ!!」
笑い声が響く。
煙の奥から魔王が現れる。
傷一つない姿で。
「見事!」
セリアの声が震えた。
「嘘……でしょ?」
「これならば贄としては十分だ」
「まさか……試していたと言うのか」
「はじめから言っているではないか、お前達は贄なのだと」
「ふざけるな!!」
リクが叫ぶ。
「まだ諦めるな!何度でも撃ち込めばいい!!」
その時だった。
「もう、よい」
骨の斧が無造作に振るわれる。
次の瞬間、空間が裂けた。
「うわぁぁぁ!」
三人が吹き飛ばされる。
岩壁に叩きつけられ、地面に崩れ落ちる。
武器が転がる。
立てない。動けない。
魔王は告げた。
「終焉の始まりだ」
その宣告だけが、洞窟の闇に静かに響いた。