最終話 光を継ぐ者達
三人が、天へと手をかざす。
その瞬間、三闘士の武器が、光へと変わった。
粒子となり、解けていく。
閃光の斧。
震天の槌。
賢哲の盾。
それらすべてが光となり、リクの頭上へと集まる。 カブ、ナンナ、ドルタムの姿が、薄れていく。
輪郭が消え、光に溶けていく。
それでも、その顔には笑みがあった。
やがて――
三人の姿は、完全に消えた。
光だけが残り、膨れ上がる。
世界を照らすほどに。
「ドルタム様……」
セリアが呟く。
「ドワーフの未来、お任せください」
バロムが拳を握る。
「あんた達の命、無駄にはしねぇ」
リクは、前を見る。
黒い太陽、迫り来る終焉。
「みんな」
静かな声。
だが、強い決意に満ちた声。
「この一撃に、すべてを賭けよう」
光が集まる。
雷が走る。
意志が重なる。
「想いを――」
「明日へ向かう勇気に変えて!!」
空が震える。
大地が唸る。
世界そのものが、呼応する。
そして――
「「「ミナデインッ!!!」」」
放たれた。
光と雷の奔流。
それはもはや魔法ではない。
願いそのもの。
未来そのもの。
黒い太陽へと、一直線に突き進む。
世界が、白く染まる。
黒い太陽が、足掻くように脈打つ。
だが――
光がそれを上回る。
「「「いけぇぇぇぇぇッ!!!」」」
リク達の叫びが、世界に響く。
亀裂が走る。
黒い太陽が、音もなく砕け散る。
そして――
黒い太陽は、完全に消滅した。
リクたちの放った光――ミナデインは、終焉そのものを貫き、内側から崩壊させた。
空を覆っていた闇は、音もなく解けていく。
ひび割れたそれは、やがて無数の欠片となり、光の粒へと変わって消えていった。
終わりを告げるように。
世界に、静かな光が戻る。
風が吹いた。
重く淀んでいた空気がほどけ、大地がゆっくりと息を取り戻していく。
崩れかけていた山は動きを止め、空は本来の色を取り戻し始めていた。
リクは、ゆっくりと顔を上げる。
その視線の先――
もう、黒い太陽はない。
ただ、広がる空。
静かな青。
終わったのだと、ようやく実感が胸に落ちてきた。
隣では、セリアがそっと胸に手を当てていた。
「……終わったのですね」
小さく、確かめるような声。
バロムは大きく息を吐き、肩の力を抜いた。
「はぁ……さすがに、本気で終わったかと思ったぜ」
その言葉に、リクはわずかに笑う。
力はもう残っていない。
だが、確かに立っている。
生きている。
それだけで、十分だった。
その時――
空の高みに、ひとつの光が灯った。
淡く、やさしい輝き。
それはゆっくりと、上へと昇っていく。
やがて――
もうひとつ。
さらに、もうひとつ。
三つの光が、寄り添うように並び、静かに天へと還っていった。
不思議と、その光から目を離すことができなかった
懐かしさにも似た感覚が、胸の奥に広がる。
そして。
ほんの少し遅れて――
小さな光が、ひとつ。
三つの光の後を追うように現れる。
離れすぎず、近づきすぎず。
ただ同じ方向へと進んでいく。
やがて四つの光は、ひとつの流れとなり――
空の彼方へと消えていった。
その先に何があるのかは、誰にもわからない。
けれど。
それでいいのだと、リクは思った。
風が吹く。
やわらかな風だった。
リクは、ゆっくりと息を吐いた。
胸の奥に残っていた重さが、静かにほどけていく。
そして、隣に立つ二人へと目を向ける。
「――行こう。明日に向かって、一歩ずつ」
セリアは静かに頷き、柔らかく微笑んだ。
「ええ。きっと、いい明日になります」
バロムはにやりと笑い、肩を回す。
「久しぶりに、鍛冶場に顔を出さなきゃな」
三人は顔を見合わせる。
そして――
同時に前を向いた。
差し込む光が、彼らの背を照らす。
その先には、まだ見ぬ道が続いている。
終わりではない。
ここから始まるのだ。
彼ら自身の手で選び取る、新しい物語が。
燦然と輝く太陽は、彼らの行く末を静かに照らしていた。
光を継ぐ者達 完