少年?
君は、表現者だわ。
ネアは静かにそう言った。
(当初の目的とは違う)
(とんでもないものを見つけた)
(この声も、この感性も——欲しい)
一瞬の間。
そして、切り捨てる。
「ヴォーカルは二人も要らない」
ツナグ「……え?」
その一言で——
ツナグは、外された。
「どういうことだよ」
ネアは迷わない。
「少年は——ここまで」
「“感じる”ことはできてる。でも——」
「“支配する”ところまでは来てない」
ツナグは言葉を失う。
ネアは続ける。
「楽譜を一瞥しただけで、“再現”じゃなくて“自分のものとして鳴らす”」
「そこまで来て、初めて——ステージに立てる」
空気が変わる。
「さあ——ここからが本番だ」
“ジャスト”の新曲。
観客が沸く。
その熱の中で、音が始まる。
——それは、もう演奏じゃない。
構築された“世界”だった。
歌が空間を支配していく。
(……違う)
(届く、じゃない)
(響く、でもない)
(——捕まれてる)
ツナグは息を呑む。
同じ“歌”のはずなのに、何もかもが違う。
ヴェルが低く呟く。
「わかるか、ツナグ」
「俺たちの音とは、“届き方”が違う」
そして——
「ネアは、お前と同じで作詞もヴォーカルもやってる」
一拍。
「それに——あいつがなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「“リアルを忘れるほどの歌声”——」
「魅了の歌姫。“リアルロスト”」
ツナグ「……」
「現実ごと奪う歌を歌う存在だ」
ステージの上で、ネアは歌い続ける。
圧倒的な声量。
圧倒的な完成度。
観客の熱が爆発する。
完全に、支配されている。
ツナグは拳を握る。
(すごい)
(全部、正しい)
(全部、完成してる)
——でも。
「……つまんねぇな」
カナデ「……え?」
ツナグは視線を上げる。
「つまんねぇのは——」
「観てるだけの自分だ」
自分の中で、何かが切り替わる。
憧れじゃない。
羨望でもない。
——欲しい。
「あっちに行く」
「ステージに立ちたい」
その瞬間。
憧れは、意志に変わった。