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この世界において、攻略が最も困難且つ凶悪な地下大迷宮の最深部。
そこには王宮庭園さながらの光溢れた空間が広がっていた。
ついに対峙する勇者と魔王。いよいよ決戦のときが迫る。
が。
魔王は言った。
「勇者よ、貴様に世界の半分をやろう。余と組まぬか?」
それはほんの余興のつもりだったのかもしれない。
しかし。
まおう は おもった!
まさか、こんなにも……、めんどくさいことになるなんて!
「ゆ、勇者よ、先ほど貴様が言っていた、世界の平和とやらは、どうなる? 貴様は余を倒さねばならんのだろう?」
「うーん、それなんだけどねー」
「ふむ」
「ぼくさぁ、色んなとこ、旅してて気づいたんだよね。なんか、悪いのは全部魔物さんのせいかと思ってたけど、違ったんだよね」
「むむ?」
「確かに悪い魔物さんはいっぱいいたけど、良い魔物さんもちょっとは居るし、むしろ、争い事とか仕掛けた黒幕張本人が実はフツーの人間だったりして、人間同士なのに、騙し合ったり、奪い合ったり、殺し合ったり、してたんだよ。なんか、もう、うんざりなんだよねー」
「ああ……、色々見えてしまったのだな、勇者よ」
「魔王さぁ、お前を倒したら、良い魔物さんは、どうなっちゃうの?」
「うむー、ま、死ぬわな。余が居ないと、魔物は全部な」
「ええー、なんでー?」
「余が死ねば、この世界に満ちている魔力がすべて消える。魔力を糧にしていた魔物たちも当然息絶える」
「そーなんだぁ……」
「魔物にとっての魔力は、貴様らで言うとこの、酸素みたいものなのだ」
「じゃぁ魔王、お前は魔物さんたちの太陽なんだね。なんかすごいなー」
「ついでに言うと、貴様らの魔法も使えなくなる」
「え! そーなの?」
「言っただろう、酸素みたいなものだと。貴様らも知らぬ間に吸収しているのだよ、魔力を」
「だから、『魔王タイヨウ』が死ねば、ぼくらの魔法も消えるんだねー」
「なんだね、その女神さまが転生しそうな世界においての、ボスの名称みたいな言い方は? つぅか、余はそんな名前ではないぞ?」
「ほぇ~、そかそかー」
「んなこたぁどおでもいいわッ!」
「わっ、ビックリだ。魔王ってば、もー、急に大声ださないでよねー」
「ええい! 勇者よ貴様ぁ、本当に余と戦わんのかッ?」
「戦う? そんな話はしてないよ。世界の半分についてだよ。あ! あとさー」
「ぬわんだッ?」
「魔王はぼくを倒してどうするの? 世界を支配とかするの?」
「ぐははは! 何を言うかと思えば。当たり前だ! この世界はすべて魔族のものになるのだ!」
「そのわりには、自分は全く出てこないよね?」
「……あ?」
「うちの王様と同じだね」
「え?」
「はんッ。なんだいなんだい、自分は偉そうにお城でお留守番なんかしちゃってさぁ。汚れ役はいつだって下っ端だよ、あーヤダヤダ」
「ゆ、勇者……よ?」
「死んでも死んでも教会送っときゃいいと思ってんだアイツらは。こき使うったらありゃしない。もはや襤褸雑巾だよ」
「ぼ、ボロぞうきんって……」
「ぼろっぼろだよ、それでも戦わなきゃなんないんだよ、こっちは」
「勇者よ、貴様は一体、なんの為に、戦ってきたのだ?」
「魔王はさ、なんで魔物を暴れさせるの? それが支配につながるの?」
「…………よ、余こそが……魔王、……魔族の王で……」
「……はぁ、たちの悪いクセかな……」
「……魔物たちの楽園を……、楽園……?」
「ぼくちょっと、このままドラゴンごとウチの城に突っ込もうか? なんてことまで浮かんできてるよ?」
「ちょいちょいちょいちょーいっ!」
まおう は おもった!
貴様がそれ思っちゃ、いかーん!
つづく。
※この物語はフィクションです。