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そこは剣と魔法が飛び交う世界。
人々は魔物を恐れ、魔物もまた己が自由のため人々を襲う。
人類の最後の希望、勇者たる若者。そして、魔物たちの長である、魔族の王。
彼らは遂に対峙――、してはいるのだが……、
「つぅか魔王さー」
「なんだ勇者よ?」
「世界支配したとしても、魔物さんたちだけでその先、維持とか出来んの?」
「はぁ?」
「いや、さっきのお偉いさんの話で思い出したんだけどさ。アイツらお城で偉そーにしてるだけかな? とか、思ったんだけど、でもそれなりにやることやってんだよな、てさ」
「な、何が言いたい? 勇者よ」
「んー、よくわかんないんだけどね、魔王は政治とかどうすんの?」
「え……?」
「人間ぜんぶ居なくなったとして、魔物さんだけが溢れかえって暴れ回ってもその先、発展とかするん? 種としての進化とか有り得るん?」
「ええええッ?」
まおう は おもった!
……いやそれは、違う世界の魔王と勇者の話なんじゃ……、
いやいやいやいやッ!
「ええい! 勇者よ、このままでは埒が明かーん!」
「ん、なにさ?」
「よいか、余は貴様とお喋りしたいワケではないのだ! 勇者よ! 戦うぞ!」
「だって、そもそもそっちから話振って来たんじゃ? 世界の半分がどうのとか……」
「はいもうじゃぁそういう事だから、ね。いくぞ? ほらほら、はよ立ち上がるがよーい、勇者よ! かかってこんかーい」
「ええー、ちょ、ちょっとまってよー!」
勇者はやっと危機を察したのか、慌てて身構える、が、
まおう は ふい を ついた!
「ぐははは! では、喰らえ! しゃくねつのごうか!」
魔王が大きくひと吹きすると、呼応するように地面からはいくつかの火柱が上がり、それらは渦を巻いて周囲を薙ぎ払う。勇者は燃える柱と柱が交差する一瞬の隙間を、体当たりでなんとかすり抜ける。だがやはり無傷では済まなかったようだ。勇者の衣服は特殊な魔力で護られているが、所々焦げ臭い煙を放っている。
「あちちちちッ! 魔王めぇやったなぁ!」
ゆうしゃ の こうげき!
「とりゃあ!」
勇者は、その身には余るほどの大きな剣を両手で掲げ、ふらつきながらも突進し、魔王に振りかぶった。
「ふん、貴様の未熟な太刀筋など、この余には……」
「えいっ!」
かいしん の いちげき!
「ぐはー!」
「えいっ!」
かいしん の いちげき!
「むぐわー!」
気持ちイーのを二発ほど貰って、魔王は数メートルほどすっ飛んでいった。やがて、よろよろと起き上がるが、その場から動こうともせず、ただこちらをうかがっていた。
「あれ? 魔王、反撃は?」
まおう は ようす を みている!
……こ、コイツ、強ぇえッ! しかも、二回攻撃だとぉッ! あれ、絶対呪われた剣だよッ! でもアイツ仲間が居ないから同士討ちの呪いなんて関係ないのなッ! ズルっけぇぇッ!
ややあって、
「ち、ちなみにな、勇者よ」
「んー、なにー?」
「あの、なんだ、その……、余が死ねば、この部屋はただの空洞に戻る」
「は? まぢ?」
「当たり前だろう……。もともとここは洞窟の奥深くだぞ。明るいのは余の魔力があってこそなのだ」
「じゃ、お前倒したら、ここ真っ暗になっちゃうの?」
「そういう事だな」
「こまるよー、もう松明も無いしMPも無いじゃんかよー! どーやって帰れっていうんだよーこんな迷路ー!」
「ぐはははッ! それでも貴様はこの余を倒せるというかなーぁ?」
「うっわ、なんかズルくない? それー」
「そういうことで。……いくぞ、勇者よッ!」
まおう の こうげき!
だが、しかし、
「あー、そーだそーだ」
ゆうしゃ は かたり かけた!
「あとさーぁ、ウチの姫さんさらったことあったよね?」
……ぎくッ!
「あれ、どうするつもりだったの? まさか食べたかったの?」
「ええっ、ばっバカったッ食べるとかっ、き、貴様なにをッ!?」
まおう は あきらか に きょどって いる!
「……い、いやぁ、あれは……、その、なんてゆーか、こう……、余の妃に、なってもらおうかな~って……か、可愛いし……」
「ええー! 魔王、ああいうのがタイプだったのー? あの金パツ縦ロールが~ぁ? えー、意外~! ふ~んへ~ぇほ~ぉなるほどねぇ……、ぷくくくっ」
「わ、わわ笑うな~ッ!」
「いやいやごめんごめん、からかって悪かったって。ま、好みは個人の自由だもんね~ぇ」
「き、きききっ、貴様ぁッ! はらわたを抉り出してやるぅぅぅッ!」
まおう は おもった!
……余は、一体、何をしているのだろう……?
しかし だれにも わからなかった!
つづく。
※この物語はフィクションです。