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砂漠のじごくのハサミ

ノノ

[ノノ]

キャラID
: TQ400-888
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: デスマスター
レベル
: 121

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ノノの冒険日誌

2018-02-08 13:37:34.0 2018-02-09 00:47:01.0テーマ:その他

ゆうはん。68 歓喜の歌


  第4章 その33


「キサマあああッ! よくもボスをぉ! おいてめらぁ、やっちまえぇ!」
 指揮官を失った荒くれ共の行動は……、全軍突撃ッ!
 男たちが一斉に詩人に襲い掛かろうとしたときである、

「天なる父よ、大地の母よ、心正しき無垢の魂を汚す欲深き罪人たちに、今一度の裁きの光を与え給え――、
 ネメシスッ!」

 突然、辺りに眩い閃光が走り、荒れ狂う雷竜が大気を震わせ刃となって地上に降り注ぐ!
「……はッ? え、え、何、なに……ッ?」
「ぎゃああああッ!」
 阿鼻叫喚。荒くれ共は成す術もなく逃げ惑う。的確に、詩人と少年以外の男たちに光の矢が襲い掛かり、一人残らず電撃の餌食だ。
 地獄絵図が繰り広げられていた。
「いや……、ちょっ、待っ、おま……っ?」
 驚愕する詩人。
 目の前に現れた者は、
「お待たせしました詩人さん、もう大丈夫ですっ!」
 純白の法衣を纏い、神々しく輝く杖を持ち、桜色の長い髪を束ねた少女。
「まさか――、イオなのかッ?」
「はいなのです、詩人さん。魔法勇者イオン、見参です!」
 それは、慈愛にあふれる光の中でたたずむ女神のように、優しく微笑む乙女がそこにいた。
 詩人は呆気に取られ、立ち尽くしていた。
「ありゃ? 詩人さん、しばらく見ないうちに、縮んぢゃいましたか?」
「いや、お前がでっかくなったんだよ」
 泣き虫チビッコ幼女だったはずのイオ、今や絶世の美少女となって現れるなんて。
「てか、そんな顔してたンだな……」
 トレードマークの獣耳フードを被ってない。初めて素顔を拝んだ詩人だ。
「ちょ、照れるです! 何ジッと見てるですか!」
 イオの こうげき!
 かいしんのいちげき!
 しじんに ちめいてきなダメージ!
「ぐふ……ッ!」
 ばったり!
 詩人はぶっ倒れた。
「ああッ! 詩人さん、せっかく再会できたのに、誰がこんなヒドイ傷をッ?」
「いや、言うまでもなく、お前さんの……もういいや」
 やった!
 詩人さんは虫の息だ!
「イオが魔法勇者になってみんなを守るには、ちゃんと修行が必要だったです。精霊さんにお願いして、こことは違う時の流れの中で、イオは試練に立ち向かいました」
「なるほどな。それで急成長を遂げたってワケか」
 それにしてもあの精霊め。そんなこと出来るなら最初っからやりゃぁいいものを――、
 殺気。
 詩人は突然起き上がり、身構える。
「見づげだぁ……ぞいづだぁ……ッ、ぞの小娘のぉヂガラを寄越ぜぇ……ッ!」
 荒くれ共のボス、大男もまた執念で起き上がり、イオに掴み掛かって来た。寸前に詩人が盾となりその身を挺して庇った。衝撃が詩人の身体を襲う。
「詩人さん!」
「う……、うおおおおッ!」
 詩人は渾身の力を振り絞り、男を背負い投げ飛ばした。
 ボスは再び動かなくなった。
 詩人もまた動けなくなった。


 丘の上には黎明が訪れようとしていた。
 やがて彼方から乳白色に染まり出す。
 辺りに瘴気だけを残して炎は鎮まり、荒くれ共は皆いつの間にか消え失せていた。
「詩人さん! 詩人さんッ! 起きてくださいです! しっかりするですよぉ!」
 イオは詩人の頭を抱き締めた。詩人はイオの膝に横たわり、
「イオ……無事か……怪我とか……してないか……?」
 ぽつりぽつりと呟いた。
 その頬にいくつもの雫が落ちる。
「詩人さん、イオは……、イオは本当は、知ってたです! 精霊さんが教えてくれたです。詩人さんが必死になって戦っていたことを……それなのに、イオは……!」
 その光景を、誰もが皆、見守っていた。
 院長婦人をはじめ、子供達やシスターたちは、何も言わず、少し離れた所から、ただジッと見つめていた。
「みんな……無事だったか……よかったなぁ……」
「はいです。詩人さんのおかげなのです」
 そして詩人は静かに目を閉じ、

 よろこび われらの あすへと つづけ
 ちちなる ひかりよ すくい たもうて
 だれもが てをとり ひとつに なるとき
 あいする よろこび ともに うたおう

「そういえば、詩人さんの歌声、初めて聴いたですね。……ねぇ、詩人さん」
「なんだい……イオ」
「イオの勇者さまは、詩人さんだったのですね」
「俺はただの……さすらいのうたびと……流浪の……吟遊詩人さ……」
「いいえ。イオの、いや、みんなの勇者さまなのです。立派だったです」
「…………悪ぃ……イオ……少しだけ……寝かせてくれ……」
「はいです。詩人さん、おやすみ……なさい……です……ぅぅぅ」

 ……つづく。
※この物語はフィクションです。
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