2023-11-11 03:01:38.0 2023-11-12 01:59:50.0テーマ:その他
ゆうはん。77「ねぇ、お兄ちゃん。あの人はキーアイテム無しでどうやってたどり着いたのかな?」「ん? 火山から落ちただろ? あの真下がちょうどあの島だったんだよ、きっと」「新説ッ?」【まおぼく】
第5章 その7
「よ~し、もぉすぐ着くぞぉ勇者さぁん!」
「ああ。待ってろよ、魔王」
あのあと街へ戻った俺たちは、持っていた金貨で小舟を入手した。そして戦士さんとふたりで海を渡っていく。
目指すは魔王城。目の前に迫る不気味な小島。
「さぁ、着いたぞ~」
ん、なんだって?
展開、急じゃね? だって?
だって、目の前にあるんだもん。せっかくの目的地が。
それにさ、何が悲しくてマッチョとふたり旅なんぞ、せにゃならんのだろうか、この俺は。ンなもん早く終わらせたいに決まってるだろ。
切り立った山の崖下、絶壁に囲まれた岩肌の一部に、ぽっかりと洞穴が。
「よし、ここから行けそうだ」
「オーケぇイ、勇者さん。我々のチカラでぇ平和をぉ取り戻すんだぁ!」
と、俺と戦士さんは洞窟への侵入を試みるが、
ぞくり。
イヤ~な予感が。
「ぐるるるる……ッ!」
なんと!
モンスターが あらわれた!
目の前の穴から唸り声と共に、野狐みたいな顔した巨大な獣が這い出て来た。
鋭い眼光、血塗られた牙、不気味な咆哮! 見るからに獰猛そのものである。
「いやいやいやいやストップストップ、すとおぉ~っぷッ! これ、序盤で戦う敵じゃないよね、絶対ッ!」
しかも俺、忘れてたけど、丸腰なんだよね。どうしよう?
「ぐるるるる……ッ!」
「ひぃ――ッ!」
まじゅうの せんせいこうげき!
「危ないッ! 勇者さん!」
なんと!
せんしは ゆうしゃを かばった!
「ぐあぁッ!」
せんしに ちめいてきな ダメージ!
巨体のくせに恐ろしい速さで飛び掛かって来た魔獣、もうダメだと思った瞬間、俺は戦士さんに庇われた。
強烈な一撃をその背に受け、吹っ飛ばされた戦士さん。慌てて俺は駆け寄った。
「そんなッ? どうして、俺なんかを?」
「バカ野郎! キミは勇者なんだぞ……!」
「!」
自慢の筋肉が敵わずにさぞ無念だろう、しかし最期の言葉を彼は振り絞った。
「勇者たるキミは、すべての人々の希望なんだ! そんなキミを守るのがこのオレの使命だ!」
「いや……あのですねぇ、とっても素敵なお言葉ですけども、いやマジでごめんなさい。もうちょっと、なんていうの、こう……、レベルアップしてから来るべきでしたぁ! ホントすみませんしたあああ!」
やはり然るべき道順は、それをズルして飛び越えては、いけなかったのかッ?
今さら後悔しても遅すぎた俺たち、だ。そして――、
「はやく、キミだけでも、逃げるんだ……、ぐ、ぐふ……!」
ばったり!
せんしは こときれた!
「ええええーッ? に、逃げろってぇ? いや~ぁ無理じゃないすかね~ぇ、見かけによらず、すっげぇ素早いっすよ、コイツぁ……、ドちくしょう!」
ゆうしゃは にげだした!
しかし!
まわりこまれた!
「ぐるるるる……ッ!」
まじゅうの こうげき!
はい、どーん!
ゆうしゃは しんでしまった!
てれれれ、てれれれ、
てれれ~ぇん。※SE
*
「おお、なんということだ。死んでしまうとは情けない」
悲しいかな、もはや聞き慣れた仰々しい声がして、俺は目覚めた。
え~っと、ここは王の間で、このオッサンは王様で、ってことは。まぁ、もう驚きはしないンだけどもさ……、
「さぁ、今一度立ち上がり、旅立つのだ――、勇者よ!」
「ん……あれ? 俺、ひとり? あのマッチョ戦士さんは?」
「何を言っておる、ここにはそなただけしかおらぬぞ?」
「え、まぢで……ッ?」
つづく!
※この物語はフィクションです。
交流酒場で「ゆうはん。」と検索すると、これまでのお話が振り返れます。
第一回はコチラから↓
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/183827313689/view/1989548/