2024-08-22 04:02:03.0 2024-08-24 01:46:52.0テーマ:その他
108【ゆうはん。】「装備って消耗品扱いのほうが実際リアルだよね、お兄ちゃん」「ボロボロになったら修繕しなきゃいけないんだろ、でも正直面倒なんだよなー、あれ」【まおぼく】
第6章 その8
「ねぇ! 何故キミは生贄なんか要求したの? ホントにお嫁さんが欲しかっただけ?」
「そんなものはただの口実だ。この地から目障りな者どもを追い出すためのな!」
おにの こうげき!
おおきなうでが ふりおろされる!
しかし!
おうじは ひらりと みをかわした!
「キミは! ここのヒトたちに何か恨みでもあるの?」
「何を言うか! 大地から我らを追いやったのは貴様らだ。だから我らはこの山に棲み、静かに眠りについた。その安息さえも再び奪うと言うのか!」
鋭い鉤爪を振り回しながら襲い掛かる妖鬼(ようき)。王子は素早く左右に飛び跳ね避け続けたがその度に花嫁衣装が徐々に切り裂かれていく。
「く、やっぱ動きづらいな、この服」
傷は受けていないが衣装の所々が破けてしまい一見ボロボロ姿の王子だ。
「なかなか扇情的な格好ではないか、ん? そそるぞい」
ニタっと不気味な笑いを浮かべた妖鬼。
「キミまだそんなこと言ってんの?」
飽きれた王子だ。
と、
「なんつーの、こう、――ガバっとやったら一瞬で衣装チェンジ! とかすれば良かったのでは?」
「そんな創作物の手品みたいな真似、こんな山奥の村の技術じゃ無理だよねー」
「今そなた、さらっとディスった?」
「悲しいけどこれ、現実なんだよねぇ」
「知らんがな!」
おにの さけびが
こだまする!
ややあって。
「でもそうか。やっぱりキミはただの怪物じゃなかったんだね」
これまでの攻防、その対話も含めてこの巨大な妖鬼から王子はただならぬものを感じ取っていた。
「ふん。長き眠りから覚めてみれば、貴様ら種族どもはいつの間にか我らの領域まで侵してきおった。もう我慢ならん!」
「そのわりには、一回生贄なんか要求したりして回りくどいよね? なんてゆーの、こう……不意を突いて一気に攻め落とせば良かったんじゃ?」
「……そなた、可愛い顔してなかなか恐ろしいことを言うのう」
「ねぇやに戦術とかも色々学んだからね。まぁ、そんなことはどーでもいいでしょ」
「言ったであろ、生贄などは口実と。そう言えば奴らは集団で逃げ出すと思ったのだ」
「え?」
「そしたらどーしたことだ、素直に捧げて来たではないか。同胞を犠牲にするなど、なんと嘆かわしいことか!」
王子は思い出す。村でのあの光景を。初めは我が身の可愛さ故に生贄を選び出したと思っていた。確かに嘆かわしい。
「ああ……うん……ね。それ、ぼくも思ったよ」
だが、そうせざるを得ない大人たちの言い分も、今ではなんとなく分かる。弱き群れが種の全体を守るために時には個を犠牲にしなくてはならぬと言うことも。だから――、
「だから――ぼくが来たんだ!」
おうじのこうげき!
王子の突進だ!
そして虚を突き器用に鬼の巨体を駆け上がった王子はさらに真上に跳躍し回転したその勢いで以って剣を妖鬼の脳天に叩きつけた!
かいしんのいちげき!
「ぐぁああああッ!」
咆哮と共に妖鬼の巨体が崩れ落ちた。
やった!
おうじは おにを
やっつけた!
「くぅ……、そなたは、一体、何者なのだ……?」
たまらずに呻き声をあげる妖鬼。
そして王子は、
「何者でもないよ。ぼくは、ぼくさ」
*
「いつの時代も、所詮、弱い者が、立場を、追われる、という運命、なのだな。よかろう、とどめを、さすが良い。そなたになら、葬られてやっても、良い……」
「そんなことしないよ」
「な……に?」
「手加減はしたつもりさ。キミがどれくらいのタフさかは、正直わからないけどね、致命傷じゃないはずだよ」
「ふ、ふふふ……子供に、情けを、掛けられるとは、な……。だが我の術も、もう解ける、この身を保つのも、これまでか……」
突如鬼の巨体から煙が吹き出した。
王子はジッと見守っている。
「キミの正体って……?」
なんと!
おにが しょうたいを あらわす!
「我は……ただの年老いた獣よ……その姿を自在に変えられるだけが取柄の、な……」
そこにいたのは、猫。
ぼさぼさに荒れた毛並みで二本の尻尾を生やした小さな猫だった。
「キミは、化け猫さん、だったのか……」
「ということで、もういいにゃー、煮るなり焼くなり、オマエの好きにするにゃー」
「急に猫っぽくなったッ?」
おうじは ビックリだ!
つづく!
※この物語はフィクションです。
交流酒場で「ゆうはん。」と検索すると、これまでのお話が振り返れます。
第一回はコチラから↓
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/183827313689/view/1989548/