2024-08-24 04:09:33.0 2024-08-24 05:54:03.0テーマ:その他
109【ゆうはん。】「むふぅ、これだけ待ってもやはり戻らぬか」「いかがなさいますか、陛下」「仕方がない。良いか、見つけ次第、力尽くで連れ戻すのだ……!」【まおぼく】
第6章 その9
なんと!
かいぶつの しょうたいは
ねこさん だった!
そして
よが あけた!
てーれーてーれー、てってんてーん♪
「王子! ご無事でしたかッ?」
女騎士だ。何やら慌てた様子で王子の元へと駆け寄って来る。
「あれ? ねぇや、ダメじゃないか、村を放ってこっちに来ちゃ」
「そ、それは申し訳ないんですけど、だって! もう朝なのに王子ったら、いつまでも戻って来られないので……!」
「ん? ああ、もう夜明けか」
王子は辺りを見渡した。
いつの間にか空は薄くだんだんとその明るさを増していく。
山間の冷めた空気が心地よかった。
「そっか、もうそんなに話込んじゃったンだね」
王子は腕に抱えた空間に声を落とした。
にゃー。
「は、話? ……あの、王子、誰と話などを……?」
困惑する女騎士。
「こら! ねぇや、“王子”禁止ね」
「はっ、申し訳ありません」
「まぁ、いいけどさ。ほら、このコだよ、化け猫さん。怪物の正体だったんだ」
王子は微笑みながら両腕を上げた。まるで何かを捧げるように。
にゃー。
「え、えっと……王子、いや、若さま、そこには何もいませんが……」
「あらら……」
「若さま、もしかして……“また”ですか?」
「うん、そうみたいだね、ねぇや。あははは」
にゃー。
「えええ……ウソでしょぉ……」
しかし!
おんなきしには なにも みえない!
「あの、お二人とも大丈夫でしょうか?」
村娘がやって来た。一度は村の生贄に選ばれたあの少女だ。
「うん、もう平気だよ。この村が襲われることはなくなったよ」
王子は笑って答えた。もう二度と生贄など選ばれることもないだろう。
「ありがとうございます!」娘は深々と頭を下げたかと思うと今度は恐る恐る顔を上げながら、「あのぅ、でも、そのお姿は……?」
「ん、ぼくのすがたって――?」
――そういえば。
王子が身に着けていた花嫁衣装は先ほどの妖鬼との戦闘でほとんどが引き裂かれ所々破れてしまっていた!
それでいて大事なところだけはかろうじて隠され、いやはや何とも扇情的なお姿の王子だった!
「ぶーッ!」
「ねぇや! ストップ! 鼻血すと~ぉっぷッ!」
ぱしゃ! ぱしゃ!
「何を撮ってるのッ! てか、ねぇや、それ“何で”撮ってるのーぉッ?」
懐(ふところ)から何やら板状の物体を取り出した女騎士。無言で“それ”を王子に向け操作しつつ、
「スマホですよ、若さま」
「なにそのファンタジー世界に在り得ないっぽい機器はーぁッ?」
「素のままに魔力を保つ、と、まぁそんな感じの魔導機具ですよ、若さま」
どくどく、どっくん、流れ出る鼻血もそのままに撮影しまくる女騎士。
「それ絶対答えになってないよねッ?」
と、
「あ、私にも今撮ったやつ送ってください」
村娘。
「良いですよ、ライン交換しましょう」
と女騎士。
「わーい、やったぁ」
はしゃぐ村娘。
「送るってなにッ? 交換ってなにーッ?」
「たがいに等しく印しあう、とまぁそんな感じの便利機能ですよ、若さま」
「なんか新機能搭載してるぅーッ?」
おうじの さけびが
こだまする!
*
やがてふたりは村を後にする。
再び旅立つ王子と女騎士。
「ぼく、猫さんから色々と聞いたんだ。やっぱり海の向こうで何かが起きたみたい。そのせいで猫さんは目覚めたんだって」
「そしたら知らぬ間に村が出来ていたんですね」
「うん。元々はずーっと昔からぼくらの街のほうに居たみたいなんだけど、自然が好きだから徐々に山の方へ移動したんだって。長い長い時間を掛けて」
「でも今回、私たちがまた追い払うような真似をしてしまったのでは?」
「んー、なんかさ、付いて来るって」
「え? 私たちの旅にですか?」
「そそ。もっと静かに住める場所を探してあげるって、ぼく言ったんだけどさ、猫さんも気になるみたい。異変の原因が」
「じゃぁ、その猫……さんは、今どこに?」
「ねぇやの肩の上」
にゃー。
「えぇぇぇッ! ちょ……、まっ? やっぱ見えませんよ! シッシッシ! どっか行ってください!」
「あれ、ねぇや、猫とか苦手だっけ?」
「いえ、平気ですけど……その、見えないのが気持ち悪いんです!」
「あははは。なんか居心地が良いみたいだよ。ちなみに今ねぇやの頭の上」
にゃー。
「なんか嫌~ぁっ!」
つづく!
※この物語はフィクションです。
交流酒場で「ゆうはん。」と検索すると、これまでのお話が振り返れます。
第一回はコチラから↓
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/183827313689/view/1989548/