カンダタの一族は、かつて盗賊を生業としていた。
しかしそれはもう過去の話だ。
今は裏の仕事からは離れ、商いを中心に事業を営んでいる。
私もその流れの中で成功を収め、金に困ることはなくなった。
そんな今、私が求めるのは新しいものではなく昔の記憶だった。
幼い頃に育った街。
商人の声、行き交う旅人、季節ごとに変わる景色。
今思えばあの街は豊かだった。
だから私はあの街をここに再現した。
金で買えるものは多い。
だが、あの頃に過ごした時間だけは買い戻せない。
せめて景色だけでも、もう一度。
その思いから作り上げた庭を紹介したい
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市場
街の中心には市場があった。
多くの商人が店を構え、客と旅人で賑わっている。
幼い頃、ここで革の手袋を買ったことがある。
欲しいままに言い値で買った。
法外な値段で売りつけられたことを知った父は
黙って店へ向かった。戻った頃には手袋と金の大半が手元にあった。
どう取り戻したのかを
はっきりと話してはくれなかった。
記憶違いかもわからないがそんな父の手元は赤黒く汚れていた気がする。
「商いは、金と物の交換ではない。
信頼のやり取りでもある。」
父の教えをこれからも忘れることはないだろう。
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裏町のカフェ
市場の外れに小さなカフェがあった。
母はここでいつもコーヒーを飲んでいた。
当然だが子供の頃はその苦さの良さが分からなかった。ただあの香りと頭を撫でる母の手の感触だけを覚えている。
隣に母はもういない。
今では私もコーヒーを飲む。
あの香りを嗅ぐと少しだけ蘇る母と過ごしたかけがえのない時間。
だからこの店は再現している。
あの頃の香りごと。
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家の庭
魔法使いだった祖母は植物を育てていた。
特別なものではない、ありふれた草木だ。
それが祖母の手にかかると、少しずつ変わった。
色が変わり、形が変わり、光を帯びる。
煌びやかな光の中に
祖母の柔らかな笑顔が浮かぶ。
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私は多くを手に入れた。
だがそれは過去を置き去りにして得たものではない。あの頃の記憶が今、私の礎になっている。
だからこそ私は、それを形にすることにしたのだ。
ようこそ、私の故郷へ