魔ルシア
「どうしたトウカ?」
「何!? 偽のラゼアの風穴で、どうみても私っぽい奴に襲撃されただと?」
トウカ
「どいつもこいつも同じ声と姿だったわ」
魔ルシア
「……なら、私かもしれんな?」
トウカ
「え~! 混乱してきた」
魔ルシア
「そもそも、私は複数いる」
「魂の欠片となって、人にとりついた残骸がいただろう?」
「邪神の宮殿に囚われ、暴れまわる私を見たそうだな?」
「イベントで浮かれていた私もいたな?」
トウカ
「確かに色々いたねー」
魔ルシア
「創生の魔力の力で生まれた私は、勇者にもなれなかった失敗作だった」
「……つまり、私も未完といえる」
「あやふやで設定が定まらない、生きているのか、完全に死んでいるのかも分からない、不具合だらけの未完作品。それが私だ」
「私も知らない私が存在していても、不思議ではないだろう?」
トウカ
「ますます意味が分からない奴だなあ。魔ルシアって」
魔ルシア
「そうか? 少なくとも、ここにいる私は単純明快だ」
トウカ
「?」
魔ルシア
「私は、魔盟友に救われた魔勇者だ」
「こればかりは、マデサゴーラや神にだって否定できない、トウカと私だけの物語だ」
トウカ
「そうだったね。それが私だけのクエストだったわ」
魔ルシア
「他の私など、全部蹴散らしてしまえ!」
トウカ
「よし!新しい職業の力で粉砕してくるよ」
魔ルシア
「おい! 私と同じ顔の奴に手加減なしか! 少しは手心を加えろ!」
トウカ
「一番めんどくさい魔ルシアはお前だということが分かったわ……」