マリスの冒険日誌

彼女の仕事抜きの趣味……



それは……












釣りである。






彼女にとって釣りは息抜きの趣味以上の意味をもっているのだ


魚と人を繋ぐ糸で命のやり取りを行う…

命のやり取り……それは彼女自身の職では日常茶飯事だが、
彼女の釣りの一番好きな瞬間は、実は釣る事ではない。







ひたすら魚の引きを待つ事である……





変に思うかもしれないが、
魚を待つ事で贅沢に時間を使っている瞬間こそ
彼女にとってゆったりできる癒しなのだ…。





彼女が釣りをしている時は集中している為か
声を掛けた者をモンスターと勘違いし襲いかかる事もある



何度か衛兵が緊急招集の為
休暇中のマリス宅に訪れ
声をかけ
それをモンスターと勘違いしたマリスが紅爪で斬りかかり
危うく衛兵を八裂きにしそうになった事があった程だ






唯一、釣り中に声を掛け襲いかからず反応したのは





ルデス団長ただ一人である





ある日休暇のマリスが釣り中に
ルデス団長がプライベートでマリス宅に訪れ

ルデス団長がマリスに声を掛けた際

突然のルデス団長の訪問に驚きのあまり
いつものマリスとは思えない女性らしい声で

「キャァッ！」

と叫ぶと足を滑らせ浅瀬で転び
普段笑顔をなかなか見せないルデス団長が
この時ばかりは大笑いしたというエピソードがある程
釣り中のマリスは集中しているのだ







それ以降彼女が休暇の際に
万が一召集がかかった場合は
必ずルデス団長直々に声をかけに
マリス宅まで足を運ぶ事となった



多忙なルデス団長がこうまでしてマリスを呼びに行くというのは
やはりマリスの実力あっての異例の行いだろう……






マリスが釣りを興じている時は
絶対に邪魔しない事が懸命だ……







……命の保証はない……