山羊君から『転生モンス狩り』に誘われた狼さん
香水1本か2本程度だろう
軽い気持ちで付いていったら朝から晩まで
みっちり連れ回されて、くたくたになっています
「朝っぱらからこんなクソ遅くまで
モンスター追い回すとか、頭おかしいって……」
疲れ果てた様子で悪口をこぼす狼さんを
「たかだかこの程度でへばってんじゃねーよ
それでもオオカミかお前はっ」
山羊君は大きな声で叱り飛ばします
「転生コンプリートはまだまだ先だからな
明日も連れてってやる」
「絶対に行かない
ひとりで勝手にやってくれ」
山羊君の誘いを断りながら狼さんは
さっさと寝床のテントへ戻ってしまいます
「だらしねぇヤツだな」
わざとらしく舌打ちを打ったあと
山羊君も自分の家へと帰っていきました

夜が明けて朝になりました
行かないって昨日は断ったけど
あの脳筋山羊は話を聞かないからな
今日も連れ回しに来るに違いない
本当は行きたくないけど、拒否して
また「だらしない」とか言われるのも癪にくる
仕方ない、今日も付き合ってやるか……
不機嫌な感情を隠しもせず
狼さんは山羊君の来訪を待ちます
しかし、どれだけ待っても
山羊君がやって来る気配はありません
遅い
いつもならもう来てる時間なのに
まさか……
昨日の俺の言葉を聞き入れたというのか?!
来るな、誘うなって俺が何回言っても
図々しく乗り込んできたあの山羊が?!
天文学的レベルの奇跡だが、それはそれで好都合
アイツに付き合ってやってる時は
やりたいこともろくに出来ないからな
久々に釣りでもするとしよう!
毎日のように山羊君に連れ出されていた狼さん
今日は釣りを楽しむようです

早速お気に入りの森へと赴き、釣竿を構えます
狼さん以外、誰もいない川のほとり
とめどなく流れる水のしらべ
ふかふかした苔と土の匂い
心地よい森の空気を感じていると
不意に水面がパシャパシャと揺れ出しました
狼さんはすかさず竿をひゅんとしならせ
魚を華麗に釣り上げます
釣れた魚は小ぶりでしたが
狼さんは満足そうにうんうんと頷きます
うむ、やはり俺には『静寂』が相応しい
コンプだの何だの、うるさいものは似合わない
ツンツン尖っていた表情が自然とゆるんでいきます
小魚を袋に入れ、ルアーをまた投げると
すぐさま獲物がかかりました
しかし、ゆるんだ気持ちが竿に伝わったのか
今度は逃がしてしまいます
久しぶりだから腕が鈍ったか……
そもそもアイツと会ってからは
釣りなんてまともに出来てなかったからな
今のを見られたら
『ヘラヘラしてっから逃がすんだよバーカ』
とかバカにされただろうな
狼さんは思わず山羊君の顔と罵倒を
想像してしまい、ふと笑ってしまいます
アイツがいたら、もっと楽しいのに……
そこでハッ!と我に返る狼さん
浮かんできた言葉を振り払うように
髪をガシガシかいて、また釣糸を垂らします
今の俺に必要なのは
『静寂』であり『ひとりの時間』だ
山羊なんていなくていいっ
再びバシャバシャと水面が暴れだします
ぐいっと力任せに振るわれた釣竿の先には
大きく肥えた魚が
狼さんはニコリともせず、魚を乱暴に袋へ入れると
さらに遠い場所へルアーを放りました
水面をジッと睨みつけながら待ちますが
なかなか獲物は食い付きません
さっきまで心地良かったはずの静けさが
今はなぜだか、うっとうしく感じてしまいます
やりたいことをやれてるのに
なんでこんなにイライラするんだ……
その自問に答えを出さないまま
狼さんはもう1度釣竿を振るうのでした

日が暮れて、森にポツポツと雨が降りだす頃
狼さんの魚袋は魚の頭がはみ出すほどに
ぎゅうぎゅう詰めになっています
釣り人ならば飛び跳ねて喜ぶことでしょう
ですが、狼さんはちっとも嬉しそうではありません
耳も尻尾も寂しげに垂れ下がり、ため息ばかり
釣果でいっぱいの魚袋とは不釣り合いです
雨も降ってきたし、もう帰るか……
なんか、疲れちゃったな
降り注ぐ冷たい雨に濡れながら
狼さんはトボトボと森から出ていくのでした
Bad End 独りぼっちの帰り道

「魚釣りすぎたから食いに来いとか……
お前から誘われるなんて珍しいこともあるもんだ
なんかイヤなことでもあったか?」
「別に何もないっ
いいからさっさと食え、焦げるぞ」
「それが誘った側の態度かよ!
おもてなしの心ってもんがお前には……
あーっ、焦げた!!」
「……だから言ったのに」
To Be Continued 寄り道をして誘う君
文字数やっべー